M字はげは治らない？原因と治療方法を解説
生え際が後退していくM字ハゲの多くはAGA（男性型脱毛症）だといわれています。
AGAは、治療しなければ悪化していく進行性の脱毛症です。M字ハゲは治らないというイメージもありますが、適切な治療をすれば治る可能性は十分あります。
今回はM字はげの原因と治療方法について解説します。
M字はげの定義
M字はげは俗称であるため、明確な定義や基準はありません。一般的にはM字型のAGAを「M字はげ」と呼ぶことが多いです。
AGAにおけるM字型の基準は耳の上から頭頂部に向かって引いたラインと、頭頂部に近い生え際の距離が2センチより短いことです。
ただし生まれつきの生え際や頭の大きさなどもあるため、この基準だけでなく医師により診断されます。
M字はげの原因
M字はげの原因は主に2つが考えられます。
- AGA（男性型脱毛症）
- 牽引性脱毛症
順番に解説します。
①AGA（男性型脱毛症）
M字はげの代表的な原因はAGA（男性型脱毛症）です。20代〜50代男性の実に約30%がAGAを発症しているといわれています。
参考：日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」
AGAは男性ホルモンの一種である「ジヒドロテストステロン（DHT）」によってヘアサイクルが短縮し、髪が成長する前に抜けてしまう疾患です。
AGAを発症すると髪が細くなり、抜け毛が増えます。AGAのなかでも生え際が後退するタイプを「O字型」、生え際が後退するタイプを「M字型」と呼びます。
【AGAの進行パターン（ハミルトン・ノーウッド）】
AGAは進行性の疾患のため、治療をしなければ抜け毛が増える、生え際だけでなく頭頂部の毛が抜ける、といったように薄毛が広範囲に及ぶことが予想されます。
②牽引性脱毛症
M字はげの原因のひとつに、牽引性脱毛症があります。牽引性脱毛症とは髪を強く引っ張る髪型を長期間続けることで、生え際の髪が抜けやすくなる疾患です。
ホルモンバランスなどは関係ないため、髪を引っ張るヘアスタイルをやめればもとに戻ります。
ポニーテールや三つ編みだけでなく、ヘアアイロンの使用も牽引性脱毛症の原因となります。
生まれつきM字はげなのはどうして？
額の広さには個人差があるため、生まれつき生え際がM字になっている人もいます。幼い頃からM字の生え際であれば、脱毛症ではないため治療は必要ありません。
ただし若年性の脱毛症もあるため、声変わりなど第二次性徴（思春期）のあとから徐々にM字になったのであれば注意が必要です。
10代でも生え際が気になる場合は、一度医師に相談してみるのがおすすめです。
M字はげを治すならAGA治療を検討しよう
M字はげの原因はAGAである場合が多いため、M字はげを治すならAGA治療を検討しましょう。
AGA治療には以下のような方法があります。
- 薬を服用する
- 発毛剤を使用する
- 注入治療を受ける
- 植毛する
それぞれ詳しく説明します。
①薬を服用する
AGA治療では、第一選択として内服治療が選ばれます。AGA治療薬には次のようなものがあります。
| 治療薬 | フィナステリド （プロペシア） | デュタステリド （ザガーロ） | ミノキシジル |
| 効果 | ヘアサイクルを正常化し抜け毛を予防する | ヘアサイクルを正常化し抜け毛を予防する | 血管を拡張し毛母細胞に栄養を送ることで発毛を促す |
| 特徴 | 予防や進行初期の人に使われる | フィナステリドよりも効果が高く、予防だけでなく増毛も期待できる | 発毛効果があり、フィナステリドと併用されることが多い。 外用薬にも用いられる |
| 副作用 | 多毛、リビドー減退、性欲減退、肝機能障害、過敏症、そう痒感、蕁麻疹、血管浮腫、初期脱毛 | 多毛、リビドー減退、性欲減退、肝機能障害、過敏症、そう痒感、蕁麻疹、血管浮腫、初期脱毛 | 肝機能障害、低血圧、手足の浮腫、頭痛、めまい、動悸、多毛 |
| 費用相場（1ヶ月あたり） | ・先発薬：8,000〜10,000円 ・ジェネリック：3,000〜5,000円 | ・先発薬：10,000〜11,000円 ・ジェネリック：6,000〜7,000円 | ・先発薬：5,000〜8,000円 |
参考：フィナステリド錠0.2mg「SN」／ フィナステリド錠1mg「SN」
参考：デュタステリド錠0.5mgAV「DSEP」
内服薬はほかの持病によって使えないものもあるため、医師と相談しながら治療薬を決定します。
AGAは進行性の疾患であるため、薄毛が改善したあとも基本的には内服治療を続けることになります。
②発毛剤を使用する
発毛効果をより上げるため、内服治療と合わせて発毛剤を使用することがあります。1日2回、脱毛箇所に直接塗布します。
発毛剤に使われる「ミノキシジル」には頭皮の血流を促進する効果があり、髪に運ばれる栄養や酸素が増えるため、髪が太く健康に育ちやすくなります。
ミノキシジル配合の発毛剤は市販でも売られていますが、100mlあたり5mg（5%）までと含有量が決められています。（薬剤師のいる薬局薬店で購入が可能）
クリニックであれば10〜15%と高含有量の発毛剤を処方する場合もあります。医師の診断のもと、個人の発毛状況に合わせて含有量を調節してくれるケースもあるため、発毛効果をしっかりと得たい場合はクリニックに相談しましょう。
③注入治療を受ける
内服治療での効果が乏しい場合や、明らかに薄毛が進行している場合には、並行して注入治療を行います。注入治療とは頭皮に直接薬剤を注射する方法で、発毛効果が高いことが特徴です。
注入治療には次の2種類があります。
| 注入治療 | メソセラピー | HARG（ハーグ） |
| 効果 | ・発毛促進 ・ヘアサイクルの正常化 | ・発毛促進 ・ヘアサイクルの正常化 ・脱毛予防 |
| 特徴 | 使用される薬剤はクリニックによって異なる。 | 使用する薬剤が決められており、日本毛髪再生研究会認定施設でしか施術できない |
| 副作用 | 赤みや腫れ、かゆみ | 赤みや腫れ、かゆみ |
| 費用相場（1回あたり） | 1回5万円前後 （1クール20万円～80万円） | 1回10万円前後 （1クール60万円前後） |
本来は注入治療全般をメソセラピーと呼ぶため、HARGはメソセラピーの一種です。しかし使用する薬剤が異なることから、別物として扱われることがほとんどです。
HARGは日本毛髪再生研究会の認定施設でしか施術できません。なお、当院は認定をうけ、HARG療法を実施しているクリニックです。
注入治療は針を使うため、痛みが強いというデメリットもあります。痛みが少ない方法もあるため、不安な方は医師に相談してみましょう。
④自毛植毛をする
内服治療や注入治療で十分な発毛効果が得られない場合は、自毛植毛を検討します。
自毛植毛では、AGAの影響を受けにくい後頭部の髪を薄毛部分に移植します。毛根や周囲の組織も一緒に採取するため、施術後は他の髪と同じように成長するのが特徴です。
植毛は自分の生やしたい部位にピンポイントで髪を植えることができるため、「おでこ全体を下げたい」「生えてこないM字部分を埋めたい」など理想の形にすることも可能です。
自分の組織を移植することから、拒否反応が起こりにくいというメリットもあります。
一方で、外科手術のためダウンタイムがあることや、植える株数が増えるほど手術費用が高くつくことがデメリットとして挙げられます。
自分でできるM字はげの予防方法
すでにAGAを発症している場合、治療なしで薄毛を改善するのは難しいですが、日頃の習慣を改善すればM字はげの予防につながります。
次のような方法を実践してみましょう。
- 育毛剤を使う
- 頭皮マッサージをする
- シャンプーを見直す
- 生活習慣を整える
- 健康的な食生活をする
- 髪型を変える
順番に解説します。
①育毛剤を使う
M字はげを予防するには育毛剤を取り入れてみましょう。育毛剤には頭皮の環境を整え、髪を育てる効果があります。
頭皮のかゆみやフケが気になる方は抗炎症作用、毛が細く柔らかい方は血行促進作用がある育毛剤を選ぶのがおすすめです。
育毛剤によく使われる成分をまとめました。
| 効果 | 成分名 |
| 抗炎症作用 | ・グリチルリチン酸2K ・塩酸ジフェンヒドラミン ・イソプロピルメチルフェノール |
| 血行促進作用 | ・センブリエキス ・トウガラシエキス ・トコフェロール酢酸エステル |
育毛剤を選ぶときは医薬部外品を選ぶとよいでしょう。厚生労働省が「育毛効果がある」と認めた有効成分が配合されています。
ただし育毛剤に発毛効果はないため、すでに薄毛が進行している場合は、発毛剤の使用を検討しましょう。
②頭皮マッサージをする
頭皮マッサージはM字はげの予防に効果が期待できます。マッサージを行なうことで頭皮の血流が良くなると、髪に栄養や酸素が運ばれやすくなります。
髪が健康に育つことで抜けにくくなり、M字はげの予防になるでしょう。
マッサージは、指の腹で頭を掴むように揉みほぐすのがおすすめです。仕事の休憩中やお風呂のあとなど、空いた時間に取り入れてみましょう。
ただし力を入れすぎたり髪を引っ張ったりすると、頭皮や髪にダメージが加わって逆効果となることもあります。優しく丁寧に行うことが大切です。
③シャンプーを見直す
洗浄力が強すぎるシャンプーを使っている場合は、シャンプーを見直す必要があるかもしれません。抜け毛予防ではできるだけ頭皮にダメージを与えないことが大切です。
頭皮の乾燥やフケが気になる場合はシャンプーの洗浄力が強すぎる可能性があるため、マイルドなシャンプーに変えてみましょう。
洗浄剤がアミノ酸系やベタイン系のシャンプーは洗浄力が弱く、頭皮の乾燥が起こりにくいのでおすすめです。シャンプーの洗浄剤の見分け方は次の通りです。
| 洗浄剤 | 見分け方 |
| アミノ酸系 | 成分名に「グルタミン酸」「アラニン」が入っている |
| ベタイン系 | 成分名に「ベタイン」が入っている |
ボトルの成分表示の上のほうを見ると、洗浄剤の名前が見つかるはずです。
「洗い上がりさっぱり」といった清涼感があるシャンプーは、洗浄力が強い傾向にあるので避けましょう。
④生活習慣を整える
M字ハゲの進行を抑えるには、睡眠や運動などの生活習慣を整えることが大切です。不健康な生活は頭皮の血行を悪くし、抜け毛を促進する恐れがあります。
まずは、質の高い睡眠を確保できるようにしましょう。
寝る前にスマホを見ない、カフェインやアルコールを飲まないなどを意識するだけでも、睡眠の質は向上します。できるだけ同じ時間に起きて日光を浴びるようにすると、睡眠リズムが整います。
運動不足の方は軽い散歩でもいいので、運動量を増やすようにしましょう。運動習慣をつけると、自律神経が整いやすくなります。
また、軽い運動は眠りを深くする効果もあります。
生活習慣が乱れている方は、睡眠の質や運動習慣を見直しましょう。
⑤健康的な食生活をする
健康な髪を育てM字はげを予防するには、バランスの取れた食事をとることが重要です。髪を作るにはタンパク質や亜鉛、ビタミンなどが使われます。
肉や魚、卵などのタンパク質を中心に野菜もしっかり摂るようにしましょう。野菜はビタミンやミネラルが豊富な緑黄色野菜を選ぶのがおすすめです。
完璧な料理を毎食とるのは難しいですが、1日や数日単位でバランスが取れていれば問題ありません。野菜が足りないときは野菜ジュースやサプリメントを活用する、タンパク質が足りないときは食事に納豆を1パックつけるなど、小さな積み重ねが大切です。
⑥髪型を変える
牽引性脱毛症が原因でM字はげになっている場合は、髪型を変えることで治ります。
髪を引っ張るような髪型をしたり、毎日ヘアアイロンで髪を引っ張ったりしている方は、髪に負担が少ない髪型に変えてみましょう。
髪型を変えても改善しない場合は、牽引性脱毛症が原因ではない可能性があるため、クリニックの受診をおすすめします。
M字はげに関するよくある質問
Q.高校生でもM字はげになることがありますか？
遺伝の影響が強い場合は、若年期からAGAを発症する場合があります。
進行性のため、成人以降早めに専門のクリニックへ相談することをおすすめします。
Q.M字はげの前兆にはどのようなものがありますか？
M字はげに限らず、細く短い髪が多く抜けるようになってきたら注意が必要です。
これはヘアサイクルが短命になっていることが原因の抜け毛で、放置していると薄毛が進行してしまいますので早めの対策が必要です。
Q.AGA（エージーエー）とは何の略ですか？
AGAとは“AndrogeneticAlopecia”の略で、「男性型脱毛症」を指します。
男性型脱毛症は進行性の脱毛症で、生え際や頭頂部の毛髪が顕著に薄くなるのが特徴です。
悪玉男性ホルモン（DHT：ジヒドロテストステロン）や遺伝的な影響が主な原因です。
まとめ
M字ハゲの主な原因はAGA（男性型脱毛症）だといわれています。AGAは進行性の疾患であるため、治療を行わなれば悪化していく可能性があります。
AGAは進行するほど治療が困難になるため、早めの対応が大切です。
もし以前よりも生え際が後退していると感じたら、悪化する前にクリニックの受診をおすすめします。
