プロペシア(フィナステリド)は、世界で初めて開発されたAGA(男性型脱毛症用薬)治療薬として世界中で認知されている薬です。
一般名『フィナステリド』米国メルク社が開発し、世界60カ国以上で承認されています。
今回はプロペシア(フィナステリド)について解説致します。
プロペシアとは?
AGAは活性型の男性ホルモンであるジヒドロテストステロンDHTが原因で発症します。
プロペシア錠の有効成分であるフィナステリドは、DHTの合成を抑制する働きを持ちます。
具体的にはDHT作成に関与する5αリダクターゼII型という酵素の働きを抑制します。
そのためプロペシア(フィナステリド)とは「5α還元酵素阻害薬」といわれております。
プロペシアの薬理作用、効能
AGA(男性型脱毛症)の原因となるDHTは、次のように作られます。
テストステロン + 5αリダクターゼ = DHT(ジヒドロテストステロン)
テストステロンは筋肉や骨などを発達させる男性ホルモンです。このテストステロンが5αリダクターゼによって変換され、DHTと呼ばれる悪玉男性ホルモンになるのです。
DHTが毛根の受容体に作用すると男性ホルモン受容体と結びつきTGF-βを増やします。
DHT → 男性ホルモン受容体 → TGF-β
TGF-β→FGF-5(毛周期の退行期に脱毛するよう毛包へ指示を出す)へと伝達されます。
まだ成長し続けるはずであった髪の毛は脱毛命令を受け取ると成長期から退行期・休止期にシフトしやがて抜けていきます。
プロペシアには5αリダクターゼのはたらきを阻害し、テストステロンからDHTがつくられるのを防ぎ、髪の成長期を守り、脱毛の指示を断ち切り、AGAの症状を改善することができます。結果的に健康な髪が保たれます。
AGAを治療しないでDHTが増え続けると髪の成長期がどんどん短くなり通常2-6年ある成長期が半年から1年に短縮してしまいます。
その結果、軟毛化といって十分に発育しない髪が増えてきます。
髪の成長サイクルは人生で20~40回程度といわれており、そのサイクルを使い切る前に早めの治療が必要です。
AGA自体も進行性があるため早い段階でその症状を抑えることが大切です。
フィナステリドを3年間服用することにより、98%の方が少なくともAGAの進行が止まったというデータがでています。
増毛している人も多く、国内の臨床実験では服用を始めて半年にて48%、1年にて58%、2年にて68%、3年にて78%の人で増毛が報告されています。
ザガーロとの違いは?
ザガーロはフィナステリドの後から開発された薬です。
プロペシアはα-還元酵素のⅡ型しか阻害しませんがザガーロはⅠ型とⅡ型の両方を阻害することでDHTの抑制効果が高いことが知られています。
作用の上ではザガーロのほうがプロペシアの上位互換にあたり、薬剤添付文書上でもAGAの治療と記載されています。
ザガーロ概ね60%程度効果が高いという治験結果がでております。
AGAの治療や年齢stageが高い人はザガーロのほうがおすすめです。ただ欠点もあり、値段が高いこと、副作用もプロペシアよりも出やすいことがあげられます。
プロペシアによる治療経過
発毛サイクルが正常に戻るには筋トレのように時間がかかります。
まず6ヵ月の服用をおすすめしています。
添付文書にも6か月の連日投与が必要であると記載してあります。
服用し始めて1-3ヶ月程度すると初期脱毛といって古い毛や発育不良な毛が抜けることがあります。
概ね3~6ヵ月後には抜け毛が減少して発毛が始まり、元から生えていた髪の毛にも太さやコシ、ハリが出てきます。1年程度するとある程度完成してきます。
増毛だけではなくて、抜け毛予防進行遅延というのも重要な要素です。
もし効果が十分でないときは治療強度の増強やデュタステリドへの変更が必要かもしれません。
年齢やstageが高い人はフィナステリド単剤では効果が薄いことが多いです。
プロペシアとの併用薬
プロペシアで効果が不十分なときはデュタステリドに変更する選択肢があります。
ただし、性欲減退などの副作用増強のリスクもあるため、ほかの選択肢としてはミノキシジル内服や外用を追加する方法があります。
また内服自体を増やしたくない人はメソセラピーやHARGといった内服ではなくて局所注射を追加していく方法があります。
メソセラピーのメリットとして副作用が少ないことや、生え際や頭頂部など気になる部位を局所的に増強する効果が高いことがあげられます。
年齢やstageによっても必要な治療強度が違いますのでまずは相談が大切です。
ミノキシジルとの違い
ミノキシジルは血管を拡張して毛母細胞への栄養、酸素、エネルギーを供給するお薬です。
成長期を延長して発毛を促す効果を発揮するお薬です。
プロペシアはDHTを阻害して異常な脱毛スイッチをOFFにすることで、抜け毛予防効果が期待できます。
ミノキシジルは『増毛』することに作用がありますが、プロペシアは『抜け毛、薄毛防止』の作用となっております。
ミノキシジルで増やしても抜けてしまっては効果が十分ではありません。
『増やす』『減らさない』この2つを併用する治療が一般的になってきています。
作用機序の異なる2つの薬を併用することでより大きな効果があります。
(ミノキシジルのリンクをhttps://agahairclinic.or.jp/drug-minoxidil/ の関連記事のように)
メソセラピーやHARGの追加
プロペシア単独では進行予防が目的となり、内服薬なので気になる部位へ局所の作用が薄いということがあります。
生え際など局所に気になるところがある方、より積極的に増毛をしたい方は成長因子やミノキシジルを配合した成分を直接注入できるメソセラピーがおすすめです。
最初の半年一年メソセラピーを併用したのち、維持は内服に移行する方もいらっしゃいます。
プロペシア錠の副作用、注意点
薬が効いている証拠でもありますが初期脱毛を認めるケースが多いです。
統計によっても変わりますが5%程度で性欲減退などが起きることがあります。
プロペシア成績調査では、全体の0.2%に性欲減退、同じく0.2%に肝機能障害が見られました。
添付文書では0.7%で性欲減退と記載してあります。
発生頻度は少ないですが、抑うつや不快感などもあり得ます。
併用禁忌の薬はありませんが、特殊な持病や内服がある方は主治医の相談が推奨されます。
肝機能に関して気になる方は、当院でも任意で採血のほうも実施しております。
女性の方は基本的に使用できない薬となっております。また服用中は献血ができません。
注意点として、PSA(前立腺癌のマーカー)が半分程度で評価されてしまいます。
このため、数値を倍にして考えていただくか、担当医に伝えていただく、もしくは当院に結果を持ってきてもらうなどが必要になります。
PSAは概ね40代以降、人間ドックや癌検査などで受けることがあります。
プロペシアの禁忌
ザガーロの成分(デュタステリド)及びプロペシア(フィナステリド)等の5α還元酵素阻害薬に対して過敏症の既往歴のある人。
女性・妊婦・産婦・授乳婦等、小児等、重度の肝機能障害のある人。
これらに該当する場合は服用を控える必要があります。
PSAおよび献血
服用中PSA(前立腺癌のマーカー)が半分程度で評価されてしまいます。
その際は倍にして換算する必要があります。また担当医に伝えていただくのもおすすめです。
プロペシアの半減期は4時間ほどですがザガーロの半減期はおよそ2週間程度あります。
プロペシア服用中は献血ができません。
プロペシアと妊活に関して
プロペシアの副作用に性欲減退と記載があること、および子供への影響を気にされる方は多くいらっしゃると思います。
プロペシアの有効成分であるフィナステリドを服用した状態で子作りをしても胎児に影響があった例はありません。
MSDの資料では「男性型脱毛症患者にフィナステリド1mgを1日1回6週間経口投与した時の精液中への移行量は極めて微量(投与量の0.00076%以下)であった。」と記載されています。
1回の射精で女性が曝露される可能性のあるフィナステリド量が7.6ng以下ということであり、この値はアカゲザルによる投与実験の胎児に異常がなかった量の約750分の1より低い値となります。
基本的には妊活をしても問題ないとされています。
ただどうしても気になる方はプロペシア以外の治療や外用、メソセラピーといった治療を考えてみるのも手かと思います。
当院ではオーダーメイドでその人にあった治療を提案させていただきます。
どうそお気軽にご相談くださいませ。