頭頂部から徐々に薄毛が進行していくつむじハゲ。自分では気づきにくいため、周囲の人から指摘されて気づいたという方もいるのではないでしょうか。

つむじハゲの初期症状と正常なつむじを自分で見分けるのは難しく、ハゲていないのに過剰に気にしてしまう方もいます。

今回はつむじハゲの基準と見分け方を写真つきで解説します。つむじハゲで悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

つむじハゲは思い込み？基準と見分け方について

つむじハゲとは頭頂部から薄毛が進行していく脱毛症で、脱毛した箇所が丸く見えることから、O字ハゲとも呼ばれます。

つむじは自分では見づらいこともあり、髪型でつむじの分け目が目立つだけで、「実は思い込みだった」というケースも多々あります。

つむじハゲの基準と見分け方を解説するので、まずは当てはまるものがあるかセルフチェックしてみましょう。

つむじハゲの基準

つむじハゲはAGA（男性型脱毛症）に特徴的な薄毛の進行パターンです。つむじハゲの進行度合いを知るには、ハミルトン・ノーウッド分類が役立ちます。

ハミルトンノーウッド分類とは、AGAの進行パターンをまとめたものです。ハミルトン・ノーウッド分類ではⅡ型〜Ⅲ型 vertexやⅣ型以降がつむじハゲと呼ばれます。

つむじハゲが進行すると、後退した生え際と繋がって頭皮の大部分が露出するようになります。

つむじハゲの見分け方

つむじはもともと頭皮が見えやすいため、初期段階では判別が難しいです。つむじハゲを見分けるには、下記の特徴を参考にしてください。

• 頭頂部の頭皮が明らかに透けて見える
• 地肌が赤もしくは茶色っぽい
• 毛が細く柔らかい
• うず巻きの方向がわからない

つむじは通常うずを巻いていますが、つむじハゲになると髪が柔らかくなるためうず巻きが見えなくなります。

実際に、つむじハゲを主訴に来院された方の写真を紹介します。

【52歳男性】

【39歳男性】

つむじハゲの原因

つむじハゲの発症では、下記のような原因が考えられます。

1. AGA（男性型脱毛症）
2. 生活習慣の乱れ
3. 間違ったヘアケア
4. ストレス

順番に解説します。

①AGA（男性型脱毛症）

AGAは頭頂部もしくは生え際から徐々に薄毛が進行していきます。つむじハゲはAGAの進行パターンの一つです。

AGAは男性ホルモンの一種であるDHT（ジヒドロテストステロン）がヘアサイクルの乱れを引き起こすことで発症します。

ヘアサイクルには、3つの時期があります。

• 成長期：毛乳頭が活発に活動し、髪が長く太く成長する時期
• 退行期：毛乳頭の活動が弱くなり、毛球部が委縮して徐々に小さくなる時期
• 休止期：毛乳頭の活動が休止する時期

成長期は3〜5年ありますが、AGAになると成長期が短縮し数ヶ月から1年になります。髪がしっかり成長する前に抜け落ちてしまうため、全体的に細く弱い髪質になるのが特徴です。

髪の本数が減るうえにボリュームもなくなるため、余計に薄毛が目立つようになっていきます。

②生活習慣の乱れ

生活習慣の乱れは自律神経やホルモンバランスの乱れを招き、つむじハゲにつながる可能性があります。

睡眠不足により自律神経が乱れると、頭皮の血流が滞り髪に酸素や栄養が運ばれにくくなります。またホルモンバランスの乱れは、DHTの産生量を増やしAGAの原因にも。

また、髪を作るためには亜鉛やタンパク質、ビタミンなどさまざまな栄養素が必要であるため、バランスの取れた食生活が大切です。

ジャンクフードや炭水化物が中心の食生活をしていると、髪の成長に必要な栄養を補給できない可能性があります。

③間違ったヘアケア

間違ったヘアケアは頭皮や髪にダメージを与え、抜け毛につながる可能性があります。不潔な頭皮環境も、洗い過ぎによる頭皮の乾燥も髪にとってはよくありません。

髪を洗わなかったりシャンプーのすすぎ残しがあったりすると、雑菌が繁殖して炎症を起こす可能性があります。

一方で洗浄力が強いシャンプーで必要な皮脂も洗い流すと、頭皮のバリア機能が失われて炎症やかゆみを引き起こしやすくなります。

④ストレス

ストレスはホルモンバランスや自律神経の乱れを引き起こし、薄毛の原因となることがあります。

ホルモンバランスの乱れはヘアサイクルの乱れに繋がります。髪が十分成長する前に抜けていくため、弱くて短い髪が増えて薄毛になる恐れがあります。

また自律神経が乱れると頭皮の血行が悪くなり、髪が育ちにくくなる可能性もあります。

つむじハゲを治すならAGA治療を検討しよう

つむじハゲの原因はAGAである可能性が高いです。つむじハゲを改善したいなら、AGAクリニックや皮膚科に相談して、AGA治療を開始しましょう。

AGA治療には下記のような方法があります。

1. 薬を服用する
2. 発毛剤を使用する
3. 注入治療を受ける
4. 自毛植毛をする

なお、AGA治療は保険適用外の治療のため、治療費は全額自己負担です。治療費が高額になることもあるため、毎月の予算を考慮して治療を選択しましょう。

それでは順番に解説します。

①薬を服用する

AGA治療では主に内服治療が行われます。AGA治療薬は次の3種類です。

治療薬	フィナステリド （プロペシア）	デュタステリド （ザガーロ）	ミノキシジル
効果	ヘアサイクルを正常化し抜け毛を予防する	ヘアサイクルを正常化し抜け毛を予防する	血管を拡張し毛母細胞に栄養を送ることで発毛を促す
特徴	予防や進行初期の人に使われる	フィナステリドよりも効果が高く、予防だけでなく増毛も期待できる	発毛効果があり、フィナステリドとの併用が多い。外用薬にも用いられる
副作用	多毛、リビドー減退、性欲減退、肝機能障害、過敏症、そう痒感、蕁麻疹、血管浮腫、初期脱毛	多毛、リビドー減退、性欲減退、肝機能障害、過敏症、そう痒感、蕁麻疹、血管浮腫、初期脱毛	肝機能障害、低血圧、手足の浮腫、頭痛、めまい、動悸、多毛
費用相場（1ヶ月あたり）	・先発薬：8,000〜10,000円 ・ジェネリック：3,000〜5,000円	・先発薬：10,000〜11,000円 ・ジェネリック：6,000〜7,000円	・先発薬：5,000〜8,000円

参考：PMDA「プロペシア錠0.2mg/プロペシア錠1mg」
参考：PMDA「デュタステリド錠0.5mgAV 『DSEP』」
参考：Electronic Medicines Compendium「Minoxidil 5 mg Tablets」

主にフィナステリドもしくはデュタステリドが処方され、より発毛効果を高めたい場合はミノキシジルも使用されます。

このうち、フィナステリドとデュタステリドは「日本皮膚科学会ガイドライン」でも「行うよう強く勧める」に分類されています。

②発毛剤を使用する

AGA治療では、ミノキシジル外用薬、いわゆる「発毛剤」をよく用います。ミノキシジル外用薬の効果は、血流の改善です。

血液中の酸素や栄養が髪に運ばれやすくなるため、髪が長く太く成長するようになります。

「日本皮膚科学会ガイドライン」でも「行うよう強く勧める」に分類されています。

ただし、使用途中で副作用が出現することもあります。発生頻度が高い副作用は下記の通りです。

• ふけ（頭部ひこう疹）：1.07%
• 接触性皮膚炎：1.04%
• 紅斑：1,01%
• そう痒感：4.00%
• 発疹：1.40%

参考：厚生労働省「ミノキシジルのリスク区分について」

肌が敏感な方は副作用が起こりやすいため、違和感を覚えた場合は使用を中止して医師に相談しましょう。

なお、発毛剤はクリニックだけでなく、薬局や薬剤師がいるドラッグストアなどでも購入が可能です。市販品は濃度上限が決まっているため、クリニックと市販品ではミノキシジルの濃度が異なるケースが多々あります。

参考：厚生労働省「RiUP X5」

③注入治療を受ける

明らかに薄毛が進行している場合や、短期間で効果を出したいという場合は、注入治療を行なうこともあります。注入治療は発毛効果のある薬剤を、頭皮に注射する治療方法です。

頭皮に注入するため薬剤の吸収率が高く、発毛効果が高いといわれています。注入治療には、次の2種類があります。

注入治療	メソセラピー	HARG（ハーグ）
効果	・発毛促進 ・ヘアサイクルの正常化	・発毛促進 ・ヘアサイクルの正常化 ・脱毛予防
特徴	使用される薬剤はクリニックによって異なる	使用する薬剤が決められており、日本毛髪再生研究会認定施設でしか施術できない
副作用	発赤、発疹、出血、そう痒感、アレルギー反応、感染	発赤、発疹、出血、そう痒感、アレルギー反応、感染
費用相場（1回あたり）	30,000円〜	80,000円〜

メソセラピーは使用する薬剤に決まりがなく、クリニックごとにオリジナルの薬剤が使われます。数種類の成長因子やミノキシジルが含まれることが多いです。

メソセラピーはクリニックによって配合する成分に違いがあるため、価格もさまざまです。

HARG療法は日本毛髪再生研究会で認定された施設でしか施術できません。当院は認定施設であるため、HARGの療法を実施しています。

HARGではヒト幹細胞から抽出したタンパクAAPEを使った薬剤を使用しており、成長因子が150種類以上含まれるのが特徴です。

成長因子はヘアサイクルを整え、成長期を維持する働きがあります。

④自毛植毛をする

自毛植毛は自分の髪を毛根ごと採取し、薄毛部分に移植する方法です。一般的には、AGAの影響を受けにくい後頭部の髪を移植します。

植毛後は他の髪と同じように成長するため、メンテナンスも不要です。

しかし手術的な治療であるため長期間のダウンタイムを伴うことや、費用が高額になるというデメリットも存在します。植毛する本数にもよりますが、総額100万円を超えることも。

また植毛後も内服治療の継続が推奨されるため、植毛をしたからといってAGA治療が終了するわけではありません。植毛後の治療費用もシミュレーションしておく必要があります。

つむじへの植毛は難しいといわれているため、複数のクリニックに相談した上で決定することをおすすめいたします。

つむじハゲの予防方法

「自分はまだつむじハゲではなさそうだが、今後が心配」

そういった方は予防に努めましょう。

つむじハゲの予防方法を6つ紹介していきます。

1. 育毛剤を使う
2. 頭皮マッサージをする
3. シャンプーを見直す
4. 生活習慣を整える
5. 健康的な食生活をする
6. 髪型を変える

①育毛剤を使う

薄毛を予防するには、育毛剤を取り入れてみましょう。薄毛予防では頭皮環境を整え、髪を健康に整えることが大切です。

育毛剤には頭皮環境を整え、髪をすこやかに保つ働きがあります。薬用成分が含まれている育毛剤を選べば、頭皮の炎症やかゆみを抑える効果も期待できます。

育毛剤は清潔な頭皮に使うのが望ましいため、入浴後に使用するのがおすすめです。

ただし育毛剤には髪を生やす効果はありません。すでに薄毛が進行している場合、育毛剤での改善は難しいため、クリニックを受診しましょう。

②頭皮マッサージをする

頭皮マッサージは家でも簡単にできる薄毛の予防方法です。頭皮の血行が良くなることで頭皮環境が良くなることが期待できます。

マッサージは指の腹で、頭皮を優しくもみほぐすようにしましょう。手のひらで頭をはさむようにして頭皮を動かすのもおすすめです。

マッサージは気持ちいいと思う強さにとどめ、頭皮に爪を立てないよう注意が必要です。

強く擦ったり髪を引っ張ったりすると、頭皮や髪にダメージを与え逆効果になることもあります。

③シャンプーを見直す

シャンプーは洗浄力がマイルドなものを選ぶのがおすすめです。

洗浄力が強いシャンプーを使うと頭皮に必要な油分まで洗い流して、頭皮が乾燥してしまう可能性があるためです。頭皮が乾燥するとフケが出たり、余計に皮脂分泌が加速したりと頭皮トラブルを招きやすくなります。

洗浄力が弱いシャンプーを購入するときは、下記の洗浄剤がメインのものを選ぶとよいです。

洗浄剤	見分け方
ベタイン系	成分名に「ベタイン」とつく ・コカミドプロピルベタイン ・ラウラミドプロピルベタイン
アミノ酸系	成分名に「グルタミン酸」「アラニン」とつく ・ココイルグルタミン酸TEA ・ラウロイルメチルアラニンNa

一般的に、お肌と同じ弱酸性の「アミノ酸系」は、優しい使用感のため推奨されます。

シャンプーのすすぎ残しは頭皮トラブルの原因となるため、しっかりとすすぐようにしましょう。

④質のいい睡眠をとる

薄毛を予防するには、質の良い睡眠をとることが大切です。自律神経やホルモンバランスが整い、髪が健康に育ちやすい状態になります。

睡眠の質を上げるために、次のことに気をつけてみましょう。

• 夕方以降にアルコールやカフェインをとらない
• 寝る前にスマホを見ない
• 寝室の温度を適温に保つ
• 温めのお風呂にゆっくり浸かる
• 起きたら太陽の光を浴びる

適切な睡眠時間は人によって異なるため、8時間必要というような決まりはありません。厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針検討会報告書」によると、人間は年齢を重ねるごとに必要な睡眠時間が短くなるといわれています。

無理に睡眠時間を伸ばそうとするよりも、質を大切にして過ごすことが大切です。

⑤健康的な食生活をする

健康な髪を育てるには食事に気をつけることが大切です。食生活の乱れはホルモンバランスの乱れにつながり、薄毛の原因となるDHTが増加しやすくなります。

また髪を作るために、さまざまな栄養素が必要です。タンパク質や亜鉛、ビタミンなどを積極的にとるようにしましょう。

亜鉛は赤身肉や卵、ビタミンは緑黄色野菜などから摂取すると普段の食事に取り入れやすいです。

⑥髪型を変える

ずっと同じ分け目でヘアセットをすると、分け目の部分が薄毛になりやすくなります。また、つむじはもともと頭皮が見えやすい部分であるため、薄毛でなくても薄毛に見える場合があります。

もしつむじの薄毛が気になる場合は、分け目を変えて隠すのがよいでしょう。

毛が寝ていると薄毛に見えやすいため、毛を立ち上げるようにセットするのもおすすめです。

つむじハゲに関するよくある質問

最後に、患者様よりよくいただく質問をまとめました。

まとめ

つむじハゲはAGA（男性型脱毛症）によくある薄毛の進行パターンです。AGAは進行性の疾患であるため、放置していると悪化する恐れがあります。

頭頂部は自分では見えにくい場所なので、進行に気づかないことも。薄毛が気になり始めた段階で医療機関を受診することをおすすめします。