円形脱毛症は円形や楕円形の脱毛斑が1個または複数できる特徴的な脱毛症です。
脱毛斑が頭部全体に広がるケースもあり、とくに髪を大切にしている女性の場合、悪化したときの精神的負担は計り知れません。
「女性は円形脱毛症になりやすいって本当?」
「早く治す方法はある?」
このような疑問をお持ちの女性も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、女性の円形脱毛症の原因や治療方法について解説していきます。
円形脱毛症の原因
円形脱毛症の主要な原因は以下の4つと考えられています。
- 自己免疫疾患
- 遺伝
- ストレス
- ホルモンバランスの変化
それぞれ、詳しく解説します。
①自己免疫疾患
円形脱毛症は自己免疫疾患によって起こるとされています。
自己免疫疾患とは、体の免疫システムに異常が生じ、免疫細胞(Tリンパ球)が誤って健康な細胞や組織を攻撃してしまう状態のことです。
円形脱毛症を発症すると、Tリンパ球が髪の毛の細胞を攻撃して炎症が起こり、髪の毛が抜け落ちてしまいます。
なお、自己免疫疾患が起こる原因はわかっていません。疲労や感染症など、精神的なストレスが引き金になると言われていますが、根治に至る治療法はなく、症状を和らげる対症療法が基本となっています。
参照:日本皮膚科学会ガイドライン「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」
②遺伝
円形脱毛症を発症しやすいかどうかは、遺伝が大きく関わっています。
中国の研究によると、円形脱毛症患者の8.4%に家族内発症があり、患者との関係(親等)が近いほど発症率は高くなるそうです。
参照:The genetic epidemiology of alopecia areata in China
また、アトピー体質(アトピー素因)も円形脱毛症の発症に大きく関係しており、これも遺伝によって引き継がれることがわかっています。
③ストレス
ストレスは円形脱毛症の直接的な原因ではありませんが、円形脱毛症を引き起こすきっかけになると考えられています。
実際に、円形脱毛症の相談に来られる方の中には、強い精神的ストレスを感じた後に発症したと感じる方も多いようです。
精神的なストレスがきっかけになると言われる理由は、自己免疫疾患の原因が関係しています。ストレスが蓄積すると体内のホルモンバランスを乱し、免疫機能の異常につながる恐れがあります。
円形脱毛症を繰り返しやすい方は、体質に加えて、日々のストレスが引き金となっているかもしれません。
一方で、発症者の中にはストレスの関与を全く感じない方もいます。「円形脱毛症ガイドライン」でも「科学的な根拠は乏しい」とも述べられており、未だ議論が続いています。
④ホルモンバランスの変化
ホルモンバランスの変化は円形脱毛症をはじめ、さまざまな脱毛症を引き起こす可能性があります。
女性ホルモンであるエストロゲンには、髪の毛を育てる作用があります。
そのため、出産や更年期などによって女性ホルモンが減少すると、抜け毛が増え、髪のボリュームが減ってしまうのです。
とくに産後3〜4ヶ月は産後脱毛が起こるケースが多く、この時期に円形脱毛症を発症する方もいらっしゃいます。
女性は円形脱毛症になりやすい?別の脱毛症の可能性も
女性は出産や更年期など、大きな身体的ストレスを経験する機会が多く、円形脱毛症を発症しやすいと言われています。しかし、実はこれには医学的根拠がありません。
アメリカで行われた調査によると、円形脱毛症の発症率に男女差はなく、全年齢において同様の比率であったそうです。
参照:Incidence of alopecia areata in Olmsted County, Minnesota, 1975 through 1989
円形脱毛症の発症には他の要因や遺伝的な要素も関与しており、発症率に性差も無いことから、女性ホルモンの変動だけで円形脱毛症が引き起こされるとは考えにくいでしょう。
ただし、女性は産後や更年期に「休止期脱毛症」や「FAGA(女性男性型脱毛症)」を発症することが多くあります。
休止期脱毛症とFAGAは、産後や更年期など、ホルモンバランスが崩れやすい時期に発症しやすい脱毛症です。
とくに女性の場合はつむじ付近の薄毛が目立ちやすいため、円形脱毛症と見分けがつきにくいこともあります。
【当院の円形脱毛症の症例】
【治療法】内服薬・外用薬、注射治療
【治療期間】9ヶ月
【治療費用】内服・外用:9,900円〜/月、注入治療:53,900円〜/月 ※治療内容や回数によって金額が変動します
【副作用・リスク】むくみ、動悸、頻脈、肝機能障害
【当院のFAGAの症例】
【治療方法】内服薬、外用薬、注射治療
【治療期間】9ヶ月
【治療費用】内服・外用:16,500円〜/月、注入治療:53,900円〜/月※治療内容や回数によって金額が変動します。
【副作用・リスク】むくみ、動悸、頻脈、リビドー衰退、肝機能障害
円形脱毛症と休止期脱毛症、FAGAは原因も治療方法も異なりますので、自己診断せず、信頼できる医師のもとで診察を受けることが大切です。
円形脱毛症は病院へ行くべき?治療しないという選択も
円形脱毛症は小さな単発型であれば、数ヶ月程度は様子を見てもよいでしょう。
日本皮膚科学会の「円形脱毛症診療ガイドライン」では、「単発型または少数の脱毛斑(数個程度)の場合、発症後1年以内は経過を観察するだけでもよい」と記載されています。
ただし、以下に該当する方は悪化する可能性が高いとされているため、早めに病院へ行くべきです。
- アトピー性疾患や自己免疫疾患の既往歴がある方
- 過去に円形脱毛症を発症したことがある方
- 脱毛斑が1年以上治らない方
- 15歳以下で発症した方
- 多発型や蛇行型など重症度の高い方
重症化を避けるためにも早めに医師の診察を受け、治療を開始したほうがよいでしょう。
円形脱毛症を早く治す方法
円形脱毛症を早く治す方法は次の3つです。
- クリニックで治療を受ける
- ストレスをうまく解消する
- 食生活を改善する
それぞれ、詳しく解説します。
①クリニックで治療を受ける
円形脱毛症を早く治すには放置せず、皮膚科や専門クリニックで治療を受けることが大切です。
適切な治療を受けることで脱毛斑の拡大を防ぎ、回復を早めることができます。
円形脱毛症の主な治療法は、以下のとおりです。
治療名 | 説明 | 保険適用 |
局所免疫療法 | 特殊な薬剤を塗布し、かぶれを起こして発毛を促す | × |
ステロイド療法 | ステロイド薬を塗布または注射し、炎症や免疫機能を抑える | ○ |
ミノキシジル外用療法 | ミノキシジルを脱毛斑に塗布し、発毛を促進する | × |
紫外線療法 | 紫外線を照射し、免疫疾患の症状を沈静化させる | ○ |
冷却療法 | ドライアイスや液体窒素を脱毛斑にあて、凍傷を起こすことで炎症を沈静化させる | × |
それぞれの治療にメリット・デメリットがあり、適切な治療方法は個人の状態によって異なります。また、同じ治療が万人に効果があるわけではないため、治療経過を見ながら方針を見極める必要があります。
まずはクリニックで医師と相談し、必要な治療期間や副作用、リスクを十分に理解することからはじめましょう。
②ストレスをうまく解消する
ストレスをできる限り避け、うまく解消することは回復を早めるために重要です。
ストレスは免疫機能に悪影響を及ぼし、円形脱毛症の症状を悪化させる可能性があります。
趣味やリラックスできる活動を見つけ、日々の生活に取り入れましょう。
③食生活を改善する
バランスの取れた食事は髪の成長に必要不可欠です。
揚げ物やジャンクフードなど高カロリー食の食べ過ぎや、アルコールの過剰摂取は頭皮環境を悪化させ、円形脱毛症の回復を遅くしてしまう可能性があります。
以下のような栄養素を含む食品は、髪の成長によいとされています。積極的に摂取しましょう。
- タンパク質(肉や卵、乳製品など)
- 亜鉛(牡蠣や豚レバー、アーモンドなど)
- ビタミン(きのこ類、納豆、卵など)
また、栄養不足は薄毛の原因となるため、過度のダイエットや極端な食事制限を避けることも大切です。
円形脱毛症についてよくある質問
Q.妊娠中なのですが治療は可能でしょうか?
妊娠中に限らず授乳中まで、できる治療がないのが現状です。
クリニックによって判断基準は異なりますが、胎児や授乳への影響を考えると治療は授乳の期間が終わってから臨むのがベターです。
Q.円形脱毛症は内臓の病気と関係がありますか?
円形脱毛症の発症率が高くなる内臓疾患に、甲状腺疾患があげられます。
甲状腺は、新陳代謝や成長を調節するホルモンを分泌する内分泌器官です。
バセドウ病や橋本病は、ホルモン分泌に異常をきたす疾患で、いずれの病気もホルモンバランスの乱れが髪の成長サイクルに影響を与え、円形脱毛症を引き起こす場合があります。
Q.円形脱毛症は何科を受診すればよいですか?
皮膚科もしくは円形脱毛症治療を扱う毛髪専門クリニックに相談しましょう。
Q.円形脱毛症になりやすい年齢はありますか?
40歳以下の若年期に起こることが多いと言われていますが、昨今のコロナウイルス感染症など未知の感染症の影響もあってか、中高年層の発症率も上がっています。
Q.円形脱毛症の治療中にしてはいけないことはありますか?
円形脱毛症が回復に向かい発毛が始まると、高い確率で白髪で発毛します。
これは円形脱毛症の炎症によるダメージで髪を黒くするメラニンにも悪影響があるためです。この白髪を抜く行為や、自己流の間違ったヘアケアは避ける必要があります。
円形脱毛症かどうか見極めるためにも病院で受診を
円形脱毛症は自己免疫疾患のひとつで、遺伝やストレス、ホルモンバランスの変化など複数の要因が複雑に関係していると考えられています。
ただし、更年期や出産をきっかけに抜け毛が増えた場合は、休止期脱毛症やFAGAなど別の脱毛症の可能性を考慮することも大切です。
いずれの脱毛症も、治療を受けるべきかどうかは個人の判断ですが、早期の治療が症状の悪化を抑え、回復を早めることにつながります。