髪が細くなり、全体的に薄くなってくる女性の薄毛。発症の原因には加齢や出産、ストレスなどさまざまなものがあります。
今回は女性の薄毛の原因と、対策を紹介します。薄毛に悩んでいる女性は、ぜひ参考にしてください。
女性の薄毛の原因
女性の薄毛では次のような原因が考えられます。
- ストレス
- ホルモンバランスの乱れ
- 加齢
- 間違ったヘアケア
- 頭皮の皮膚疾患
- 栄養不足
順番に解説します。
①ストレス
女性の薄毛ではストレスが原因となる場合があります。過剰なストレスがかかると自律神経が乱れ、頭皮の血流低下やホルモンバランスの乱れが生じます。
頭皮の血流が低下すると髪に栄養や酸素が運ばれにくくなるため、髪が細くなり抜けやすくなるのです。
また髪の成長には女性ホルモン(エストロゲン)が関係しています。ストレスで女性ホルモンが減ると、ヘアサイクルの成長期を維持できなくなり、髪が痩せるようになります。
②ホルモンバランスの乱れ
比較的若い女性の薄毛の原因としては、ホルモンバランスの乱れが考えられます。とくに出産後は大量の抜け毛が発生しやすいです。
出産後の脱毛症を「産後脱毛症」「分娩後脱毛症」と呼びます。妊娠中はエストロゲンが大量に分泌されていたのが、出産後は急激に減少します。
エストロゲンはヘアサイクルを正常に保つ働きがあるため、出産後は髪が抜けやすくなるのです。ただし出産後の脱毛は一時的なもので、自然と治っていきます。
また、過剰なダイエットもホルモンバランスが崩れる原因の一つです。激しい運動をする、食事を十分にとらないなどの方法で痩せようとすると、心身に負担がかかり薄毛を発症することがあります。
③加齢
加齢による薄毛は、卵巣の働きが低下しエストロゲンが減少することが原因です。
エストロゲンが減少すると成長期の髪の割合が減るため、細くコシがない髪が増えていきます。その結果髪全体のボリュームが減り、頭皮が見えるようになるのです。
更年期(45〜55歳)から閉経にかけて、エストロゲンの分泌量は急激に低下します。とくに閉経を迎えた女性は薄毛で悩む方が多いようです。
50歳〜65歳の女性を対象にした研究では、52.2%の女性が薄毛を経験しているとの結果が示されています。
参考:Chaikittisilpa, Sukanya MD, MSc; Rattanasirisin, Nattiya MD; Panchaprateep, Ratchathorn MD, PhD; Orprayoon, Nalina MD; Phutrakul, Phanuphong PhD; Suwan, Ammarin MD; Jaisamrarn, Unnop MD, MHS「Prevalence of female pattern hair loss in postmenopausal women: a cross-sectional study」
④間違ったヘアケア
間違った方法でのヘアケアは頭皮や髪にダメージを与え、抜け毛を引き起こす恐れがあります。
洗浄力が強いシャンプーの使用や朝晩2回のシャンプーは、必要な皮脂を洗い流し、頭皮のバリア機能を低下させる原因です。頭皮が乾燥して紫外線やホコリ、汗などからダメージを受けやすくなります。
また、絡まった髪を引っ張るようにブラッシングするのもよくありません。髪が切れやすくなるだけでなく、頭皮に力が加わり脱毛の原因になります。
⑤頭皮の皮膚疾患
脂漏性皮膚炎という皮膚疾患を発症し、頭皮が炎症を起こす場合があります。かゆみやフケが特徴の疾患で、頭を掻きむしったり炎症が悪化したりすると抜け毛に繋がります。
皮膚科を受診した患者の2〜3%が脂漏性皮膚炎だというデータもあり、脱毛の原因となっている可能性も十分にあります。
脂漏性皮膚炎の主な原因はマラセチア菌(癜風菌)などの常在菌です。
しかしマラセチア菌だけでなく、下記のような要因も関係しているといわれています。
- 皮脂の異常
- 内分泌異常
- ビタミン代謝異常
- 環境
- ストレス
十分にシャンプーできていない、お風呂後に髪を自然乾燥させるなどの行動は頭皮を不潔にし、脂漏性皮膚炎を引き起こす恐れがあります。
一方でシャンプーのしすぎも脂漏性皮膚炎の原因になります。頭皮が乾燥すると過剰に皮脂を分泌して頭皮を守ろうとするためです。
⑥栄養不足
栄養不足も薄毛の原因の一つです。髪を生やし成長させるためには、食事からとれる栄養素が必要です。
過剰な食事制限や偏った食事を続けていると、タンパク質や亜鉛が足りず健康な髪が育たなくなります。また、ビタミンが不足すると頭皮環境にも悪影響を及ぼします。
しっかり食べていても、ジャンクフードや炭水化物ばかりの食生活では栄養が不足しがちです。
栄養が足りないと髪が抜けやすくなるばかりでなく、髪が細くなることでボリュームダウンし余計に薄くなったように感じます。
女性の薄毛の症状
女性の薄毛は主に次の6つに分類されます。
- びまん性脱毛症
- FAGA(女性男性型脱毛症)
- 円形脱毛症
- ひこう性脱毛症
- 脂漏性脱毛症
- 牽引性脱毛症
①びまん性脱毛症
びまん性脱毛症は特定の部分の髪が薄くなるのではなく、全体を間引いたように薄くなる脱毛症のことを指します。
②FAGA(女性男性型脱毛症)
女性でも男性のように生え際や頭頂部、分け目を中心に薄くなる症状です。
③円形脱毛症
名前の通り、円形状に毛髪が抜け落ちる疾患です。自己免疫疾患の一種で、軽症から重症まで様々な種類が存在します。一般的な薄毛とは症状や治療方法が異なります。
④ひこう性脱毛症
ひこう性脱毛症は大量の乾燥したフケを伴うことが特長です。
自身の頭皮に合わないシャンプーにより乾燥が進み発症するケースが多いです。
⑤脂漏性脱毛症
頭皮のベタつきや湿ったフケを伴うのが特徴の脱毛症です。
脂漏性皮膚炎(過剰な皮脂分泌で頭皮に赤みや湿疹ができる疾患)が原因です。
症状によっては外用薬が必要になる場合もあります。
⑥牽引性脱毛症
きつく結んだポニーテールなど、毛根を引っ張るヘアスタイルによって毛根に負荷がかかり起こる脱毛症です。
女性の薄毛を治すなら薄毛治療を検討しよう
女性の薄毛はさまざまな原因が絡み合っていることが多く、原因を特定することは困難です。薄毛を治すなら、まずは受診をして薄毛治療を検討しましょう。
薄毛治療には下記のような方法があります。
- 薬を服用する
- 発毛剤を使用する
- 注入治療を受ける
- 自毛植毛をする
これらの治療は自由診療であるため、保険は適用されません。治療費は全額自己負担になることを覚えておきましょう。
①薬を服用する
女性の薄毛治療では、下記の内服薬が主流です。
注入治療 | パントガール | スピロノラクトン | ミノキシジル |
効果 | ・髪の健康を保つ ・抜け毛を予防する | ・抜け毛を予防する ・発毛を促進する | ・抜け毛を予防する ・発毛を促進する |
特徴 | びまん性脱毛症に使用される | FAGAに使用される | びまん性脱毛症やFAGAに使用される |
副作用 | 腹痛、下痢、めまい、頭痛、動悸、胸焼け | 頻尿、喉の渇き、めまい、蕁麻疹(じんましん)、食欲不振 | 肝機能障害、低血圧、手足の浮腫、頭痛、めまい、動悸、多毛 |
費用相場(1回あたり) | 5,000〜10,000円 | 5,000〜7,000円 | 6,000〜8,000円 |
参考:Pantogar「How Pantogar® works」
参考:日本医薬情報センター「スピロノラクトン錠25mg 『ツルハラ』」
参考:Electronic Medicines Compendium「Minoxidil 5 mg Tablets」
薄毛の原因によって、使用する内服薬は変わります。薄毛の原因をご自身で特定することは困難なため、まずはクリニックを受診してみることが大切です。
また、どの治療薬も妊娠・授乳中の内服は安全性がはっきりと検証されていないため、使用はしないことが推奨されています。
②発毛剤を使用する
女性の薄毛治療では「ミノキシジル外用薬」という発毛剤を使用することもあります。頭皮の血行を促進し、髪の成長や発毛を促します。
男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版でも「行なうよう強く推奨する」の評価を得ており、効果が高い治療です。
しかし妊娠中や授乳中の女性は、使用の際注意が必要です。妊娠中にミノキシジル外用薬を使うことによる安全性は十分に検証されていません。
さらにミノキシジルは成分が母乳に移行することも知られています。母乳に移行したミノキシジルが、乳児にどのような影響を与えるかはわかっていません。
妊娠・授乳中はミノキシジル外用薬の使用を控えましょう。
参照:Pmda|女性薬 ミノキシジル配合外用液1%「FCI」
③注入治療を受ける
高い発毛効果を求める場合は、注入治療がおすすめです。注入治療とは薬剤を頭皮に注入する治療法です。
注入治療は使用する薬剤の違いによって、主に下記の2種類に分けられます。
注入治療 | メソセラピー | HARG(ハーグ) |
効果 | ・発毛促進 ・ヘアサイクルの正常化 | ・発毛促進 ・ヘアサイクルの正常化 ・脱毛予防 |
特徴 | 使用される薬剤はクリニックによって異なる。 | 使用する薬剤が決められており、日本毛髪再生研究会認定施設でしか施術できない |
副作用 | 発赤、発疹、出血、そう痒感、アレルギー反応、感染 | 発赤、発疹、出血、そう痒感、アレルギー反応、感染 |
費用相場(1回あたり) | 30,000〜50,000円 | 80,000〜150,000円 |
内服薬と合わせて治療を行なうことで、より効果的に発毛を促進できます。
④自毛植毛をする
生え際やこめかみの薄毛が気になる方は自毛植毛がおすすめです。自毛植毛とは、後頭部などから毛髪を移植する治療方法です。
移植後は他の髪と同じように成長するため、自然な仕上がりになります。
自毛植毛の利点は、好みのデザインで髪を生やすことができる点です。
長年のまとめ髪で、生え際やこめかみが薄毛になる女性もいるでしょう。一部だけ薄毛になった方も植毛なら自然に増毛できます。
ただし植毛は術後は痛みを伴うことや、傷跡が残る可能性があるため慎重に検討すべきでしょう。
女性の薄毛に関するよくある質問
Q.薄毛を改善させる食べ物はありますか?
食事は髪の成長には大切な要素ですが、食生活の改善だけで薄毛を改善するのは難しいです。原因を改善するお薬や、発毛を促す治療を行いながら、髪に必要な栄養を意識した食生活を心がけましょう。
Q.20代女性でも薄毛になることはありますか?
女性の薄毛の原因は様々で、遺伝やストレス、ホルモンバランスの乱れなど多岐に渡ります。その他にもコロナ後の脱毛や、産後脱毛を訴える方も20代では多く見られます。
Q.加齢による薄毛も治りますか?
加齢による薄毛の場合は、髪の本数などの要因以外に軟毛化や髪質の変化(エイジング毛)も原因となります。そのため、薬による治療に加えて、髪の成長を促す注入治療など一歩踏み込んだ治療が有効です。
Q.薄毛の治療はずっと続けないといけませんか?
薄毛治療の結果、満足な毛量になった後もその状態をキープする維持治療が必要となります。
まとめ
女性の薄毛はホルモンバランスの乱れやストレスなど、複数の要因が絡んで発症するといわれており、原因の特定が困難です。
ボリュームの低下や頭皮の露出が気になる方は、クリニックでの薄毛治療を検討しましょう。新しく生えた髪が伸びるまでに時間がかかるため、早めの対策が大切です。