アトピー性皮膚炎の患者様は円形脱毛症の合併率が高い傾向にあり、再発を繰り返しやすいことも明らかにされています。
当院にもアトピーと円形脱毛症の両方に悩まされ、どちらも治らないというご相談が多く寄せられます。
「アトピーだと円形脱毛症は治りにくいのか」
「アトピーと円形脱毛症の両方に効く治療法はある?」
このような疑問を解消するため、本記事ではアトピーと円形脱毛症の関係についてまとめました。アトピーでも行える円形脱毛症の治療法も解説するので、アトピーと円形脱毛症でお悩みの方はぜひお読みください。
【監修】
リバイブAGAクリニック院長 内富 一仁
東北大学卒業後、名古屋セントラル病院にて従事。その後、都内AGAクリニックにて院長を勤めた後、リバイブAGAクリニックを開院。
円形脱毛症の原因の一つ「アトピー素因」
近年の研究で、円形脱毛症の発症にはアトピー素因が関与するとの見方が強まっています。
アトピー素因とは、簡単に説明すると「アレルギーを起こしやすい体質」のことです。本人または家族にアレルギー性疾患があったり、アレルギー反応に関わる免疫物質(IgE抗体)を作りやすい体質の方はアトピー素因であると言えます。
アレルギー性疾患の種類は次の通りです。
- 気管支喘息
- アレルギー性鼻炎
- アレルギー性結膜炎
- アトピー性皮膚炎など
アトピー素因をもつ円形脱毛症患者は全体の4割以上
とある研究では、円形脱毛症の患者様のうちアトピー素因をもつ方の割合が4割以上であるとの結果が報告されています。
アトピー素因をもつ家族も含めると円形脱毛症の合併率は50%以上とも言われ、アトピー素因と円形脱毛症の関わりがいかに深いかがわかります。
しかし、アトピー素因が円形脱毛症の発症にどう影響するか、具体的なメカニズムは明らかにされていません。
円形脱毛症の患者様の中には再発を繰り返してしまう方がいるのですが、再発率が高い方ほどアトピー素因の割合も高い傾向にあります。
参考:)勝岡憲生:アトピー性疾患と円形脱毛症ーアトピー性円形脱毛症ー,Derma,1999; 23: 9-12.
アトピー素因以外に考えられる原因
円形脱毛症の発症に関与する要因には他にもあります。
- 自己免疫疾患
- 遺伝
- ホルモンバランス
- ストレス
円形脱毛症の原因として、ここ最近もっとも有力視されているのが自己免疫疾患です。
自己免疫疾患は、免疫系機能が何らかの理由で誤作動を起こす疾患です。本来ならば自身の身体に害となるものに反応するはずが、自己の正常の組織を攻撃してしまいます。
円形脱毛症においては毛包にダメージが加えられ、髪が抜けてしまうものと考えられているのです。
また直接的な原因ではありませんが、ホルモンバランスやストレスが円形脱毛症の引き金となる場合もあります。
アトピーでも円形脱毛症は治せる?有効な6つの治療法
アトピーの患者様が円形脱毛症を治すのに有効な治療法は次の6つです。
- ステロイド療法
- 局所免疫療法
- ミノキシジル外用療法
- 紫外線療法
- 冷却療法
- 抗ヒスタミン薬の内服療法
それぞれの治療法を詳しくみていきましょう。
治療法①ステロイド療法
アトピー治療でもおなじみのステロイドは免疫反応を抑制するお薬で、円形脱毛症の治療にも用いられます。
症状が軽度の成人、および円形脱毛症になりたての小児では、ステロイド外用が治療の第一選択肢です。内服薬や局所注射は年齢や症状に合わせて行われます。
治療法②局所免疫療法
化学試薬を使って脱毛部位に人工的にかぶれを起こし、免疫反応を抑制する治療法です。
アトピーの患者様や小児にも行えるため、数ある治療法の中ではもっとも推奨度が高いのが特徴です。多発型や全頭型、汎発型と幅広い症状に対応することや、発毛効果についても高い水準の根拠が示されています。
参照:日本皮膚科学会|円形脱毛症診療ガイドライン2017年版
治療法③ミノキシジル外用療法
ミノキシジル外用は、主に壮年性脱毛症(AGA・FAGA)の治療に用いられる発毛薬です。
円形脱毛症では単発型や多発型の併用療法として推奨される治療法です。アトピーの患者様にも行えますが、湿疹やかゆみ、赤みなどの症状がある時は使用できません。
また肌が弱い方の場合、かゆみやかぶれといった副作用が報告されています。以上の理由から、アトピーの患者様がミノキシジル外用を使用する際は慎重な経過観察が必要です。
治療法④紫外線療法
紫外線療法はアトピーと円形脱毛症どちらにも有効な治療法です。
紫外線には免疫反応を抑える作用があるため、免疫反応が過剰な皮膚症状を沈静させる効果が期待できます。
紫外線療法は照射する紫外線の波長によって次の3種類に分類されます。
種類 | 特徴 |
PUVA療法(UVA) | 薬を塗布または内服後に波長の長い紫外線を照射する |
ナローバンド療法(UVB) | 波長が311nmの紫外線を照射する |
エキシマレーザー療法(UVB) | 波長が308nmの紫外線を照射する |
PUVA療法は、全頭型および汎発型の円形脱毛症に対して行われます。ソラレンとよばれる光感受性増感剤を使用すること、また入院が必要な治療法です。(成人の患者様に限る)
ナローバンド治療とエキシマレーザー治療についてはすべての円形脱毛症に対応でき、小児への治療も可能です。
治療法⑤冷却療法
ドライアイスや液体窒素などで脱毛部位を冷却し、免疫反応を抑制する治療法です。
単発型あるいは多発型の円形脱毛症に対して行うのが一般的で、その他治療法の併用療法として推奨されます。
軽い痛みを伴いますが、簡便かつ副作用が軽微なことからアトピーの方でも受けられます。
治療法⑥抗ヒスタミン薬の内服療法
抗ヒスタミン薬はアトピーをはじめとするアレルギー疾患に用いられる治療薬です。
皮膚のかゆみを抑える効果があり、円形脱毛症においては塩化カルプロニウムやフェキソフェナジンなどとの併用が推奨されています。
アトピー治療では保険診療となりますが、円形脱毛症の治療では自由診療として扱われます。
円形脱毛症とアトピーにまつわるよくある質問
円形脱毛症とアトピーについて、患者様から多く寄せられるご質問と回答をまとめました。
Q.アトピーが治れば円形脱毛症も治りますか?
アトピーが改善することで円形脱毛症も軽快する場合があります。
円形脱毛症の発症にアトピー素因が何らかの影響を与えると言われているものの、具体的な関係については明らかにされていません。
Q.アトピーが改善せず円形脱毛症も治りません。早く治す方法はありますか?
新しい治療を検討してみるのはいかがでしょうか。
円形脱毛症の治療法には、
- 免疫反応を抑制する方法
- 頭皮の血流を促す方法
- 発毛作用のある薬を脱毛部位に塗布する方法
- アレルギー反応を抑制する方法
などさまざまな種類があります。
アトピー素因がある場合、アトピーの軽快が脱毛の改善につながる傾向にあります。したがって、円形脱毛症の治療というよりはアトピーの改善を目指すケースが多いです。
アトピーと円形脱毛症を切り離して考え、円形脱毛症単独の治療を行うという選択肢があってもいいと考えます。
Q.アトピーと円形脱毛症を併発している場合してはいけないことはありますか?
生活を厳しく制限する必要はありません。
注意すべき内容には食事や身に着けるもの(素材)、ストレスなどがあげられます。体を清潔に保つことやお部屋の掃除にも気を配りましょう。
Q.多発性円形脱毛症が治る確率はどれくらいですか?
具体的な数字は明らかにされていません。
アトピー素因や自己免疫疾患などがない軽度の単発型だと、ほとんどの場合自然に回復すると言われています。しかし、重症化するほど自然治癒の確率が下がることがわかっています。
公開日:
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Q.アトピーだと円形脱毛症の進行速度は早まりますか?
進行速度についての具体的なデータはありません。
円形脱毛症が進行する可能性については、アトピー素因のない患者様に比べて高い傾向にあります。
まとめ|アトピーと円形脱毛症は同時に治療が可能です
アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患のある患者様は、円形脱毛症を繰り返しやすい傾向にあります。
アトピー素因と円形脱毛症には深い関わりがありますが、お互いがどのように作用するのかは明らかにされていません。またアトピー性疾患は完治が難しく、上手に付き合っていく必要があるとも言われています。
一方で円形脱毛症は完治が可能な病気です。有用性が実証されている治療法も数多くありますので、適切な治療で早期改善を目指していきましょう。