更年期にさしかかると、心身にさまざまな不調を感じられる方は多いです。
疲労感や頭痛、のぼせといった症状のほか、抜け毛の増加や円形脱毛症が認められる方もいます。中でも円形脱毛症は症状が目につきやすいため、余計に気が滅入って強いストレスを感じてしまうでしょう。
そこで今回は、円形脱毛症と更年期の関係をわかりやすくまとめました。
【監修】
リバイブAGAクリニック院長 内富 一仁
東北大学卒業後、名古屋セントラル病院にて従事。その後、都内AGAクリニックにて院長を勤めた後、リバイブAGAクリニックを開院。
円形脱毛症と更年期の関係
円形脱毛症の発症と更年期には、ホルモンバランスの変化という共通点があります。
更年期障害=ホルモン分泌量の低下による心身の不調のこと
更年期障害は、年齢による性ホルモン分泌の低下によって引き起こされます。
女性の場合、閉経を迎える50歳前後に症状が見えはじめます。男性の更年期障害(LOH症候群)は40代後半ごろにはじまり、症状を強く感じるのは50〜60代が多いです。
更年期障害のおもな症状は次の通りです。
身体的な症状 | 精神的な症状 |
・のぼせや顔のほてり ・動悸や息切れ ・発汗 ・血圧上昇または下降 ・耳鳴り ・頭痛やめまい ・膀胱炎 ・筋肉や関節の痛み ・生理不順(女性の場合) ・勃起不全(男性の場合)など | ・イライラ ・不安感 ・無気力 ・うつ ・不眠 ・集中力や記憶力の低下など |
ホルモンバランスの変化で抜け毛が増える場合がある
年齢によるホルモンバランスの変化は、抜け毛の増加につながることもあります。
なぜホルモン分泌の低下が抜け毛の原因となるのか。その理由にはエストロゲン(卵胞ホルモン)と呼ばれる女性ホルモンが深く関係します。
エストロゲンは女性らしい身体をつくるためのホルモンで、生殖器の発育や自律神経を安定させる役割を担います。肌や髪の健康を維持するのも、エストロゲンの働きによるものです。
エストロゲンは思春期以降に分泌量が急増し、20〜30代でピークを迎えます。髪の成長に関わるホルモンなので、閉経に向けて分泌量が一気に減少すると髪も徐々にボリュームを失ってしまうのです。
更年期によるストレスが円形脱毛症の誘因となることも
更年期に突入すると、抜け毛の増加だけでなく円形脱毛症を発症する方がいます。
更年期障害は円形脱毛症の直接的な原因ではありません。しかし、ホルモンバランスの変化やストレスなど、発症のきっかけとなる共通点があります。
更年期は心身にさまざまな不調が見られますが、その不調がすべて更年期障害によるものとは限りません。更年期に発症した円形脱毛症も、ホルモンバランスの変化とは別の原因で生じた可能性もあるでしょう。
体調が優れない、または気になる症状がある時は、自己判断せずに専門医へ相談することをおすすめします。
円形脱毛症は40〜50代女性に多い?
円形脱毛症の発症に年齢差や男女はあまり関係ありません。
円形脱毛症の患者様は人口の1〜2%と言われていて、この割合は日本でも海外でも同じです。人種や社会情勢なども関係なく、誰でも発症する可能性があると考えられています。
円形脱毛症の原因
更年期は円形脱毛症の直接原因でないとお伝えしました。では、どのような理由で発症するのか、ここからは円形脱毛症の原因を見ていきましょう。
原因①自己免疫疾患
円形脱毛症の原因としてもっとも有力視されているのが、自己免疫疾患です。
自己免疫疾患は、何らかの理由で免疫系機能に異常が生じ、自分の身体を攻撃してしまう疾患のことです。
免疫系機能は本来、細菌やウイルスといった異物の侵入を防ぐための機能ですが、自己免疫疾患では健康な毛包を異物として認識します。
その結果として抜け毛が増え、脱毛斑が生じてしまうのが円形脱毛症です。
円形脱毛症を併発しやすい自己免疫疾患には次の種類があります。
疾患 | 症状 |
甲状腺疾患(橋本病・バセドウ病) | 甲状腺ホルモンが分泌過剰な状態では動悸・多汗・手足の震え・イライラなど甲状腺ホルモンが分泌不足な状態では脈が遅い・寒気・眠気・物忘れなど |
尋常性白斑 | 肌の色が白く抜ける |
全身性エリテマトーデス(SLE) | 顔面蝶形紅斑・発熱・倦怠感・関節痛・口内炎など |
膠原病 | 関節の痛み・腫れ・こわばり・発熱・疲労感・筋力の低下・紅斑・紫斑・レイノー現象(寒さで指先が白くなる)など |
重症筋無力症 | 眼瞼下垂・複視・筋力の低下・疲労感など |
原因②遺伝
円形脱毛症になりやすい体質は、家族間で遺伝する確率が高いことがわかっています。
関係が近くなるほど遺伝の可能性は高くなり、一卵性双生児の発症率は50%以上であるとの研究結果も報告されています。
原因③精神的ストレス
ホルモンバランスと同じく、ストレスもまた円形脱毛症を発症するきっかけになると考えられています。
ストレスで自律神経のバランスが乱れると、交感神経の活動が活発になり血管収縮が起こります。血管収縮によって血流が滞ると、頭皮に十分な栄養が行き渡らず、髪の成長を妨げることになるのです。
また、自律神経の乱れは免疫系機能の誤作動を引き起こすこともあり、その結果として自己免疫疾患になる可能性もあります。
更年期は心身にさまざまな不調が現れるため、ストレスを感じやすい日々が続きます。積み重なったストレスが引き金となり、円形脱毛症の発症につながる可能性は十分に考えられるでしょう。
原因④アトピー素因
アレルギー体質の方やIgE抗体を産生しやすい体質の方は、そうでない方に比べて円形脱毛症になりやすいことがわかっています。
AA患者47例中29例がアトピー性疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、軽度のアレルギー性鼻炎)のいずれかを合併し、AA患者80 例中187例(23%)がアトピー性皮膚炎を合併していたとの報告がある。
引用元:日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版
円形脱毛症の発症にアレルギーが関与することはわかっているものの、具体的な関係はいまもなお明らかにされていません。
円形脱毛症の進行が止まらない理由
円形脱毛症の発症には、自己免疫疾患や遺伝など体質的な要因が深く関係します。
進行が止まらない理由には、まず円形脱毛症になりやすい体質が影響していると考えられます。加えて、ストレスやホルモンバランスの変化なども進行を加速させる原因になっている可能性があるでしょう。
円形脱毛症になると、いままで以上に抜け毛の存在が気になるものです。治癒には時間がかかるため、なかなか治らないと感じる方もいるかもしれません。
実際に進行している場合もありますが、強い不安から悪化したと思い込んでしまう方は多いです。症状が改善しないと感じる時は、一人で悩まず専門医へ相談することが大切です。
円形脱毛症の初期症状
円形脱毛症の初期症状には次のものがあります。
- 前触れなく抜け毛が増える
- 部分的に頭皮が見えるところがある
- 抜け毛が細い
- 髪を引っ張ると簡単に抜ける
- 爪が凸凹している
円形脱毛症のもっともわかりやすい初期症状は、抜け毛の増加です。
シャンプーやブラッシング、枕に付着する抜け毛の量などで異変を感じる患者様が多いです。自分では見えにくい部位の脱毛斑は、家族や知人に言われて気づいたという方もいます。
もう一つ、円形脱毛症の特徴的な初期症状として爪の表面が凸凹する点状陥凹という症状が認められるケースが多いです。
点状陥凹は免疫系機能の異常によるものと考えられ、円形脱毛症の診断基準の一つでもあります。
円形脱毛症を早く治す方法
円形脱毛症を早期に改善させるには、できるだけ早く治療を受けるのが最善です。
軽度の円形脱毛症は自然に回復すると言われています。しかし、体質的に円形脱毛症を発症しやすい方の場合は脱毛斑が増えたり大きくなったりする可能性があるのです。
症状次第では治癒までに数年かかる場合もあるため、早いうちに医療機関を受診し、適切な治療を受けることをおすすめします。
育毛のためにすぐできるケアとして、栄養バランスのいい食事や質の高い睡眠、頭皮ケアなどもはじめてみるといいでしょう。
まとめ:円形脱毛症は更年期がきっかけになることがあります
更年期の円形脱毛症はホルモンバランスの変化が影響していると考えられます。
更年期はこれまでにない心身の不調を感じることが多いです。不安やイライラなど、精神的ストレスが円形脱毛症の引き金となる可能性もあるでしょう。
円形脱毛症の改善には早期の治療が有効です。更年期の円形脱毛症でお悩みの方は、できるだけ早く専門医へ相談することをおすすめします。