円形脱毛症の原因は特定が難しく、とくに重症の場合治療が長期化しやすいものです。
長期にわたって治療を続けていても、なかなか治らない、場合によっては悪化してしまうといったこともあります。
原因が特定しづらく治療効果も人によって異なるため、円形脱毛症に深刻に悩んでいる方が後を立たないのが現状です。
今回は円形脱毛症が長期化する理由や対処方法などを詳しく解説していきます。
【監修】
リバイブAGAクリニック院長 内富 一仁
東北大学卒業後、名古屋セントラル病院にて従事。その後、都内AGAクリニックにて院長を勤めた後、リバイブAGAクリニックを開院。
円形脱毛症は治らない病気ではない
円形脱毛症の症状は部分的な脱毛から、頭髪全体の脱毛まで幅広い症状があります。
早い段階での治療が重要になるため、治療開始が遅れ重症化している場合や、全体に脱毛が広がっている場合には治療に時間がかかる可能性があります。
実際、数年間にわたり治療を続けている方も多くいらっしゃいます。
しかし、円形脱毛症は治らない病気ではありません。
長い期間を治療に要しても、頭髪の大元の細胞である幹細胞は生きているので、再生する可能性はあるのです。
また、円形脱毛症の治療方法は1つではありません。
治らないと諦めるのではなく、さまざまな治療を試しながら、根気よく治療していくことが大切です。
円形脱毛症の原因
円形脱毛症の原因は未だはっきりとは解明されていませんが、主に以下の4つが有力だと考えられています。
- ストレス
- 自己免疫疾患
- アトピー素因
- ホルモンバランス
それぞれ解説していきます。
ストレス
円形脱毛症の原因として一番に思い浮かぶのが「精神的ストレス」という方も多いのではないでしょうか。
元をたどると精神的ストレスが原因の1つになっていた、ということはありえますが、直結した要因であるという科学的根拠は実はありません。
しかし、精神的ストレスから交感神経系のバランスが乱れ、脱毛や毛髪が生えてくるのが遅くなる場合があります。
その結果、円形脱毛症になるという経緯から、精神的ストレスも原因だと言われています。
また、ストレスを抱えることで自律神経が乱れ、免疫の誤作動が起きることで「自己免疫疾患」を引き起こすことも。
次章で詳しく解説しますが、現在では自己免疫疾患こそが円形脱毛症の主な原因だと考えられています。
自己免疫疾患
自己免疫疾患というのは、自分を守ってくれるはずの免疫が自分を攻撃してしまう、免疫に異常をきたしている疾患のことです。
円形脱毛症そのものが、毛包を自分で破壊する自己免疫疾患の1つなのではないかという説が近年有力視されています。
さらに自己免疫疾患である関節リウマチや全身性エリテマトーデス、尋常性白斑などの疾患を保有した患者にも円形脱毛症の症状が現れる場合もあります。
アトピー素因
アトピー素因というのは、患者本人または患者家族などの血縁関係がある人が、アトピーの要素をもっているかということです。
具体的にはアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息などの疾患を本人または血縁者が保有している場合です。
実は1992年の研究の時点で、円形脱毛症の患者の約半数近くが、アトピー素因を保有していることが明らかになっています。
参考:Shellow WV, Edwards JE, Koo JY: Profile of alopecia
areata: a questionnaire analysis of patient and family, Int
J Dermatol, 1992; 31: 186―189
ホルモンバランス
とくに女性の場合、女性ホルモンの乱れにより円形脱毛症を発症する場合があります。
とくに妊娠から出産までのホルモンの変化は顕著で、妊娠中に増加したホルモンが、出産後急速に減少することから、円形脱毛症が生じる場合があります。
また、更年期などの女性ホルモンが減少する時期にも、円形脱毛症を発症しやすいといわれています。女性ホルモンは女性の円形脱毛症の原因として重要視されている原因です。
円形脱毛症の重症度
円形脱毛症の種類は主に下記の5つに分類されます。
- 単発型
- 多発型
- 蛇行型
- 全頭型
- 汎発型
それぞれ軽症と重症にわけて、円形脱毛症の症状を紹介します。
軽症の場合|単発型・多発型
単発型と多発型は軽症の分類に入ります。
単発型
一般的な円形脱毛症のイメージにもある、1点のみ円形に脱毛が生じているのが、この単発型です。頭部だけではなく体毛や眉毛にも出現することがあります。
この段階では1年以内に80%程度の人が治癒すると言われていますが、中には次の段階の多発型に移行する方もみられます。
アトピー性疾患や内分泌疾患の既往のない、個々の脱毛巣の最長存続時間が1 年以内である少数の脱毛斑の場合、80%程度の患者において1年以内に毛髪が回復することが本邦で報告されている。
引用元:日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
多発型
単発型で生じる円形の脱毛が2箇所以上出現すると、多発型と呼ばれます。
多発型は拡大して他の脱毛部位とくっついて脱毛部位を広げる場合があります。
多発型の段階だと完治まで長期間かかる場合もあるため、根気よく治療する必要があるでしょう。
重症の場合|蛇行型・全頭型・汎発型
続いて重症といわれるケース
- 蛇行型
- 全頭型
- 汎発型
の3種類について解説します。
蛇行型
脱毛している箇所が後頭部から側頭部まで蛇のように広がることからこの名前で呼ばれています。
蛇行型の治療は、一般的には長期間かかると言われています。
全頭型
全頭型は名前の通り脱毛が頭部全体に広がっているケースです。
完全に頭髪が抜け落ちてしまっていることもあり、この場合の治療はかなりの時間を要します。
円形脱毛症とともに生活する工夫として、ウィッグをかぶる・帽子をかぶるといった方法があります。
汎発型
全頭型よりも症状が進行したケースで、頭髪だけではなく眉毛や体毛など、全身の毛も抜けている場合は汎発型と呼ばれます。
このケースは円形脱毛症の中で最重度のケースであり、長期的な治療を根気よく続けていくことと、日常生活における工夫をしていく必要があるでしょう。
※円形脱毛症は脱毛範囲が25%を超えると重症とみなされる
円形脱毛症の重症ケースは治療が長期化する
とくに重症ケースの円形脱毛症を発症している場合は、治療が長期化する傾向にあります。
さまざまな治療を試しても効果が現れにくい、場合によっては改善しても再発することもあります。
治療の継続が精神的に苦しくなる場面もあると思いますが、主治医と相談しながら、諦めずに治療をしていくことが大切でしょう。
円形脱毛症の治療が長期化する際にもっとも影響を与えるのが、QOL(quality of life:生活の質)が低下してしまう点にあります。
QOLとは「健康とは、単に病気や病弱の状態ではないというだけでなく、肉体的、精神的および社会的にもすべて良好な状態である」とWHOの憲章で定められたものです。
参考:WHO世界保健機構憲章
効果の出にくい治療によって心が弱ってしまったり、日常生活の質が落ちてしまったりしないように、生活の中でできる工夫をしていくことが円形脱毛症の方には重要といえるでしょう。
円形脱毛症の進行は自然に止まらないのか
コイン型の脱毛斑ができる単発型であれば、2〜3ヶ月で自然に発毛がみられますが、長期化している場合には注意が必要です。
また、多発型以上の脱毛症を発症した場合は放っておいても自然治癒することは難しいでしょう。
とくに注意したいのが、単発型だと思っていた円形脱毛症が実はそうではなく、気づいた時には進行してしまっている場合です。
多発型を発症した方が全員そのまま汎発型まで進行するわけではありませんが、進行する可能性は十分にあります。
また、重症になるほど治療が難航しやすいため、円形脱毛症はとにかく「早期発見」「早期治療」が大切です。
異変に気づいたら専門のクリニックで診てもらうことをおすすめします。
日常生活で円形脱毛症を隠す方法
長期化する円形脱毛症とうまく生きていくためにも、日常生活で円形脱毛症を隠す方法を紹介します。
- 帽子やバンダナ・スカーフを着用
- ウィッグ(かつら)をかぶる
- ヘア・ファンデーションを使用する
- ヘアアレンジで隠す
帽子やバンダナ・スカーフを着用
簡易的でコストもかからないため、単発型から汎発型までいずれの方にもおすすめの方法です。
ただ、夏場などの暑い時期にはムレてしまうこともあり、衛生面では気を付けなければなりません。
夏場は通気性の良いものを着用するなど、季節にあわせて選ぶtよいでしょう。
ウィッグ(かつら)をかぶる
医療用ウィッグや部分ウィッグなど、脱毛範囲に合わせて選べるのがウィッグのメリットです。
男性用、女性用、また子供用も発売されており、脱毛班が広範囲にわたる蛇行型や、全体にわたる全頭型でも隠しやすい方法です。
色やヘアスタイルも豊富にあるのでおしゃれを楽しむこともできます。
ただし、こちらも通気性の面では注意が必要でしょう。特に暑い時期はショートヘアにしたり、毛量が少ないものにするなど、工夫するのがおすすめです。
ヘア・ファンデーションを使用する
気になる部位に塗布することで、髪色に馴染ませることができるものです。
一部分のみの脱毛の単発型や数が少ない場合の多発型の方におすすめです。
薬局などでは売っていない場所もあるので、通販などで入手するのが一番スムーズでしょう。
ヘアアレンジで隠す
単発型の場合におすすめの方法です。
脱毛班の場所にもよりますが、髪の毛を束ねる場合に円形脱毛症の部位に髪の毛を引っ張ってきて隠すという方法です。
側頭部や頭部の下の方に脱毛班がある方には適しているでしょう。
コストもかからず簡単な方法ではありますが、対応できる方は限られています。
円形脱毛症の重症化のサインに気づく方法
円形脱毛症は重症化する前にできるだけ早く治療をスタートすることが重要です。
重症化のサインに気づくには、日常生活の中で見つかるサインを逃さないようにすることが大切です。
具体的に、以下のような変化があった場合には、一度クリニックを受診することをおすすめします。
- 髪の毛の表面が荒れている
- 頭皮にピリピリ感などの違和感を感じる
- 抜ける毛の量が増えている(とくに髪をブラッシングする際などは気づきやすい)
まとめ|うまく脱毛斑を隠しながら治療の継続を
円形脱毛症の治療は長期に及ぶ傾向があります。中には数年以上の時間がかかることもあります。
その中ではQOLを下げないように治療を根気よく続けていくことが大切です。QOLを下げないためにも日常生活のなかで、脱毛斑を上手に隠して生活することは重要なポイントでしょう。
円形脱毛症は長期化しやすいものの、治らない症状ではありません。また、有効な治療方法も多く見つかっています。
お一人で悩まず、まずは専門のクリニックに相談してみてください。