円形脱毛症は髪が突然抜け、円形や楕円形のハゲができる脱毛症です。
円形脱毛症の治療薬として、育毛剤や養毛剤の使用をイメージする方も多いかもしれません。しかし原因によっては、アレルギー薬を治療に用いることもあります。
では、なぜ円形脱毛症の治療にアレルギー薬を使用するのでしょうか。
本記事では、円形脱毛症の治療にアレルギー薬を使用する理由を解説します。合わせてアレルギーと円形脱毛症の関係についても紹介します。
【監修】
リバイブAGAクリニック院長 内富 一仁
東北大学卒業後、名古屋セントラル病院にて従事。その後、都内AGAクリニックにて院長を勤めた後、リバイブAGAクリニックを開院。
アレルギーが原因で発症する円形脱毛症の種類と特徴
円形脱毛症の原因はストレスやホルモンバランスの変化、遺伝など多岐にわたります。
そのほかに、アレルギーが原因で発症する円形脱毛症もあります。
アレルギーが原因の円形脱毛症は、次のようなメカニズムで発症することが、最近の研究で明らかになりました。
- 何らかの理由でアレルギー反応がおこる
- 体内で免疫グロブリンE(IgE)やサイトカインを産生
- 毛包周囲の細胞に作用
- 炎症を引き起こす
- 局所的に毛髪が抜けやすくなる
- 円形脱毛症を発症
またアレルギーで発症する円形脱毛症は、アレルギー性疾患と自己免疫疾患の2つの原因にわけられます。それぞれの種類と特徴について解説します。
アレルギー性疾患
アレルギー性疾患とは、さまざまなアレルゲンに反応して起こる免疫反応の一種です。アレルゲンの種類や量、体質などによって、蕁麻疹や皮膚の炎症・かゆみ・鼻水・涙・くしゃみなど、全身に症状が現れます。
アレルギー性疾患には、次のような病気が該当します。
- アトピー性皮膚炎
- 気管支喘息
- アレルギー性鼻炎
- アレルギー性結膜炎
- 花粉症
- 食物アレルギーなど
また、アトピー性疾患と円形脱毛症には、以下の特徴があることが報告されています。
円形脱毛症の患者本人または家族にアトピー素因がある | 54% |
円形脱毛症の患者本人にアトピー素因がある | 41% |
円形脱毛症とアトピー性皮膚炎の合併がある | 23% |
参照:勝岡憲生:アトピー性疾患と円形脱毛症―アトピー性円形脱毛症―,Derma,1999; 23: 9―12.
アトピー素因(アトピーのなりやすさ)と、円形脱毛症の素因(円形脱毛症のなりやすさ)は、ともに遺伝で受け継がれやすいことがわかっています。そのため、家族にアトピー素因や円形脱毛症があると、本人もアトピーや円形脱毛症の発症リスクが高くなるのです。
さらに、アトピー素因がある人の円形脱毛症は、アトピー素因がない人と比較して次のような特徴も報告されています。
- 全頭型・汎発型円形脱毛症は多発型と比較して、アトピー性皮膚炎を合併している患者が多い
- 重症な円形脱毛症の人ほど、アトピー素因を持っている
参照:Mohan GC, Silverberg JI: Association of vitiligo and alopecia areata with atopic dermatitis: a systematic review and meta-analysis, JAMA Dermatol, 2015; 151: 522―528.
自己免疫疾患
自己免疫疾患とは免疫システムがエラーを起こして自分自身の細胞や組織を攻撃したために、全身にさまざまな症状が現れる病気です。
自己免疫疾患には、次のような病気が該当します。
- 甲状腺疾患
- 尋常性白斑
- SLE
- 関節リウマチ
- I 型糖尿病
- 重症筋無力症など
また、自己免疫疾患で発症する円形脱毛症発症率は、病気ごとに異なると報告されています。
代表的な病気とその割合を以下にまとめました。
疾患名 | 割合 |
甲状腺疾患 | 8% |
尋常性白斑 | 4% |
参照:Muller SA, Winkelmann RK: Alopecia areata, an evaluation of 736 patients, Arch Dermatol, 1963; 88: 290―297
参照:日本皮膚科学会ガイドライン「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」
アレルギーが原因の円形脱毛症の診断方法
一般的に円形脱毛症の診断は、脱毛の状態や拡大鏡(トリコスコピー・ダーモスコピー)を使用した毛根や毛包の観察により診断されます。
アレルギー性疾患や自己免疫疾患が原因の円形脱毛症を疑う場合には、次のような検査をおこないます。
アレルギー検査
食物や花粉・動物・薬など、アレルギー性疾患の原因物質はさまざまです。
その原因を突き止めるために行われるのが、アレルギー検査です。
アレルギー検査には、どのアレルギー物質に陽性反応を示すか特定する検査と、アレルギーを発症すると増えるIgEという免疫グロブリンの量を測定する検査があります。
その他に総トリプターゼ値やヒスタミン値などを調べることがあります。
アレルギー検査は採血と皮膚テストの2種類の方法があり、検査項目も多岐にわたり、比較的費用も高額です。必ず医師に検査方法や検査項目、費用を確認しましょう。
皮膚生検
皮膚生検とは円形脱毛症を発症したり、炎症を起こしたりしている皮膚の一部を採取し、顕微鏡で観察することで病気の原因や重症度を判断する検査です。
脱毛の状態や拡大鏡の観察・アレルギー検査では診断が困難な脱毛症に行われます。
皮膚生検は皮膚の一部を特殊な器具で切り取るため、痛みや違和感を生じることがあります。
この検査では円形脱毛症の原因が毛周期異常によるものか、炎症細胞の浸潤によるものかなどを詳しく診断できます。
参照:脱毛症における皮膚生検と病理診断法(臨床皮膚科 73巻5号)
アレルギーが原因の円形脱毛症の治療方法
日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017では、円形脱毛症の治療として
- 局所免疫療法
- ステロイドの局所注射療法
- ステロイド外用療法
- ミノキシジル外用療法
などが推奨されています。
アレルギーが原因の円形脱毛症の場合には、次の2つの治療も並行しておこないます。それぞれの治療方法の特徴は以下の通りです。
①アレルギー薬を使用する
アレルギーが原因の円形脱毛症には、アレルギー薬の使用が推奨されています。
アレルギー薬を使用する理由は、アレルギー反応を抑えたり炎症をやわらげたり、免疫システムを正常な状態に整えることで円形脱毛症の改善を目指すからです。
具体的には、抗ヒスタミン剤やステロイド薬などを使用します。
内服薬や塗り薬など、お一人おひとりの脱毛の程度や頭皮の状態によって使用する治療薬は異なります。
②円形脱毛症の原因の病気を治療する
円形脱毛症の原因となる病気は、多岐にわたります。
自己免疫疾患や甲状腺疾患など、円形脱毛症を引き起こしている病気を適切に治療しなければ、再発を繰り返してしまい円形脱毛症の改善が見込めないケースも。
また、円形脱毛症の原因がはっきりしない場合や、さまざまな治療方法を試しても改善が見込めない場合には、何らかの病気が隠れている方もいます。
ぜひ一度、専門クリニックで医師の診察を受け、早期に治療をスタートさせたいですね。
アレルギーが原因の円形脱毛症を早く治すための方法
アレルギーが原因の円形脱毛症を早く治すための方法を3つ紹介します。
円形脱毛症を引き起こす病気を治療する
何らかの病気が原因で円形脱毛症を発症している方は、原因となっている病気を治療しましょう。
円形脱毛症が長期化したり拡大したりするほど、治りにくくなります。
円形脱毛症を早く治したいなら、早く病気の治療をスタートさせることが重要なのです。
抜け毛・薄毛専門クリニックを受診する
アレルギーが原因の円形脱毛症は、抜け毛・薄毛専門クリニックで治療できます。
お一人おひとりの原因や症状に応じたきめ細かな治療や最先端の治療を受けられるのは、専門クリニックだからできること。
受診先に悩んでいる、今の受診先での治療では症状の改善が見込めない場合は、抜け毛・薄毛専門クリニックの受診を検討してください。
生活習慣を見直す
円形脱毛症だけでなく、アレルギー性疾患の原因に生活習慣が影響していることがあります。
たとえば、乱れた食生活や栄養不足・睡眠不足は免疫力や抵抗力が落ちる原因の1つです。
その結果、頭皮環境が悪化するだけでなく、体調を崩しやすく回復しにくくなります。
さらに部屋の掃除が不十分だと、アトピーや喘息などのアレルギー性疾患を引き起こすリスクが高くなります。
規則正しい生活リズムや、栄養バランスの整った食事、清潔な環境を心がけましょう。
円形脱毛症とアレルギーに関するよくある質問
最後に、円形脱毛症とアレルギーに関して多くの方から寄せられる質問に回答します。
円形脱毛症の治療にアレルギー薬を使用したい方、アレルギー性疾患が原因の円形脱毛症の治療にのぞまれている方は、ぜひ参考にしてください。
Q.円形脱毛症に花粉症の薬は効果があるのですか?
花粉症の治療に用いられる抗アレルギー薬の中には、円形脱毛症の治療に効果が期待できる薬もあります。
しかし、薬の種類や用法や用量は円形脱毛症の症状によって異なりますので、自己判断で使用するのはやめましょう。
Q.円形脱毛症を早く治す食べ物はありますか?
円形脱毛症を早く治す食べ物はありません。
日本皮膚科学円形脱毛症診療ガイドライン20017年版によると、円形脱毛症の治療に推奨されている29項目の中に、食べ物での治療を推奨した項目はないからです。
しかし、頭皮環境を整え健康的な髪を生やすために、栄養バランスのとれた食事がよいとされています。
特定の食べ物を食べるよりも、栄養バランスの取れた食生活で健康的な髪を育てることを心がけたいですね。
Q.アトピーがあると円形脱毛症を繰り返しやすいというのは本当ですか?
本当です。
アトピーの治療が上手くいっていないと、頭皮や毛包に炎症が起こったり、リンパ球や好酸球・肥満細胞の浸潤が起こりやすくなります。
またヘアサイクルの乱れや頭皮環境の悪化など、髪の成長を妨げる原因も多く、円形脱毛症を繰り返しやすくなってしまうのです。
Q.アレルギーが原因の脱毛症を放置するとどうなりますか?
アレルギーが原因の円形脱毛症を治療しないまま放置すると、円形脱毛症の範囲が広がったり、治りにくくなったりするリスクが高くなります。
治療するかどうかは患者さんの判断に委ねられますが、髪の毛が抜けると見た目に大きな影響を与えます。
人の目が気になったり、増える抜け毛をストレスに感じたりするかもしれませんね。
Q.アレルギーが原因の円形脱毛症の人がしてはいけないことはありますか?
あります。
アレルギーが原因の円形脱毛症の人がしてはいけないことを3つ紹介します。
- 円形脱毛症を放置する
- 自己判断で治療する
- 医師の指示通りに薬を使用しない
繰り返しになりますが、円形脱毛症を放置すると重症化したり慢性化したりするリスクが高くなります。
自己判断で市販薬や薄毛治療薬を使用して、円形脱毛症を悪化させたり、他の頭皮トラブルを招く可能性があるため、自己判断での治療はやめましょう。
さらに、円形脱毛症を早期に改善したいからといって、医師の指示を守らずに薬を使用してはいけません。
どのような薬にも副作用がありますし、最悪の場合、円形脱毛症がひどくなるかもしれないからです。
円形脱毛症でお悩みの方は、専門医や専門クリニックへの相談がおすすめです。
アレルギー薬を円形脱毛症の治療に用いる時は専門医に相談を
アレルギー性疾患や自己免疫疾患が原因の円形脱毛症の治療には、アレルギー薬を用いる場合があります。
しかし、自己判断でアレルギー薬を服用することは推奨できません。
なぜなら円形脱毛症の早期改善・重症化予防には、発症の原因に合わせた適切な治療が欠かせないからです。
円形脱毛症でお悩みの方、アレルギー性の円形脱毛症の方は、専門医への相談をご検討ください。