円形脱毛症を放置していると大きくなったり数が増えたり、最悪の場合円形脱毛症の部分から発毛が望めなくなったりする可能性があります。
円形脱毛症を早く治すためには、放置せず、円形脱毛症の原因や進行に応じた適切な治療を行う必要があります。
本記事では、円形脱毛症にお悩みの方に向けて次の内容を解説していきます。
- 円形脱毛症の治療方法
- 治療にかかる費用相場
- 保険適応になるケース、ならないケース
円形脱毛症の治療方法
円形脱毛症の治療の基本は“対症療法”です。対症療法とは円形脱毛症ができないようにするのではなく、できてしまった円形脱毛症を少しでもよくする治療方法です。
円形脱毛症の治療方法は、次の4つに分類できます。
- おすすめする治療方法
- 行ってもよい治療方法
- おすすめできない治療方法
- 行うべきではない治療方法
今回は日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版をもとに、それぞれの治療方法ついて詳しく解説します。
参照:日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
おすすめする治療方法
おすすめする治療方法は以下の4つです。
治療方法 | 適応 | 特徴 | リスクやデメリット |
ステロイド局所注射療法 | 脱毛部位が毛髪の25%以下(S1以下)の成人の単発型や多発型の円形脱毛症 (子供には推奨しない) | 脱毛部分にステロイドを注射し、脱毛部の炎症を抑え症状の改善を目指す。原則、4〜6週間に1回の間隔でステロイドを注射する。 | 注射の際に強い痛みを感じたり、頭皮が萎縮したりするケースがある。 |
局所免疫療法 | 脱毛部位が毛髪全体の25〜49%以上(S2以上)の多発型・全頭型・汎発型の円形脱毛症年齢を問わずおこなえる | 試薬で頭皮をかぶれさせ、発毛を促進する。 1〜2週間に1度塗布する。約9割に発毛効果が期待できる。 | アトピー性皮膚炎の人は皮膚症状が悪化するリスクがある。 使用する試薬は医薬品ではないため、自費診療になる。 |
ステロイド外用療法 | 単発型~融合傾向のない多発型の円形脱毛症 | 脱毛部にやや強いステロイドを1日1〜2回塗る。 | にきびや毛包炎、皮膚の萎縮などがおこるリスクがある。 |
かつらの使用 | すべての円形脱毛症 | 紫外線や外的刺激から頭皮を守る効果が期待できる。 さらに、ストレスや心理的な負担が軽減され、患者の生活の質が向上する。 | 円形脱毛症が治るわけではないため並行して治療が必要。 |
行ってもよい治療方法
行ってもよい治療方法は以下の6つです。
治療方法 | 適応 | 特徴 | リスクやデメリット |
内服療法 | 薬によってことなる | 円形脱毛症の程度や進行具合にあわせて、ステロイド、抗アレルギー剤、セファランチン、グリチルリチン、メチオニン配合錠などを服用する。 抗アレルギー剤などは、ほかの治療方法と一緒に行うとより効果が期待できる。 | 胃の不快感や血圧上昇、吹き出物など薬による副作用のリスクがある。 |
静脈注射によるステロイドパルス療法 | 発症後6ヶ月以内で、急速に進行する脱毛巣が 25~49%(S2)以上の成人の円形脱毛症 | ステロイドを点滴で数日間投与する。 発症から半年以内のケースでは約7割以上の症状改善が報告されている。 | ステロイドの副作用が全身に現れるリスクがある。 |
外用療法 | 薬によって異なる | カルプロニウム塩化物、ミノキシジルなどの薬を脱毛部分に塗る。ほかの治療方法と一緒に行うとより効果が期待できる。 | かゆみやかぶれ、炎症が発生するリスクがある。 |
冷却療法 | 単発型および多発型の円形脱毛症 | ドライアイスをあてたり、液体窒素を脱毛部にスプレーで噴霧したりする治療方法。ほかの治療方法と併用して行う。 | 治療の際に軽度な痛みを伴う可能性がある。 |
紫外線療法(PUVA療法・エキシマライト・ narrow-band UVB療法) | PUVA療法:症状固定期の全頭型や汎発型の成人エキシマライト・narrow-band UVB療法:すべての病型の患者 | 紫外線を照射し、皮膚の新陳代謝を促し症状の改善を目指す。 | 子どもにはおこなえない。 |
紫外線療法以外の光線療法、直線偏光近赤外線照射療法(スーパーライザーⓇ ) | 単発型および 多発型の円形脱毛症 | 他の治療と併用して行う。 | ひりつき、かゆみ、みずぶくれが生じる可能性がある。 |
おすすめできない治療方法
おすすめできない治療方法には以下があります。
- シクロスポリン(免疫抑制剤)内服療法
- 分子標的薬の全身投与
- 漢方薬療法の内服
- 抗うつ薬・抗不安薬の内服
- タクロリムス(免疫抑制剤)・プロスタグランジン製剤・ビタミンD・レチノイド外用療法
- 催眠療法・心理療法
- 星状神経節ブロック療法
- Platelet rich plasma(PRP:自己多血小板血漿)療法
- アロマテラピー鍼灸治療
- レーザー治療 (LED、低出力レーザー)
- PDT(photodynamic therapy)
これらの治療方法は有効性が確認されておらず、円形脱毛症の改善は期待できません。
治療方法によっては副作用をおこすリスクもありますので、自己判断で行うのはやめましょう。
円形脱毛症の治療でやってはいけないこと
円形脱毛症の治療はさまざまな方法があります。その中でやってはいけないことは、次の2つです。
- 自己判断で薬を使用する
- 治療を途中でやめる
自己判断で薬を使用する
円形脱毛症の進行具合や特徴によって、使用できる薬は異なります。
また薬を頻回・多量に使用したからといって、円形脱毛症が早く治るわけではありません。
前述のように円形脱毛症の治療に使用する薬には、多くの種類があります。
自己判断で薬を使用して円形脱毛症を悪化させたり、肌荒れなどを起こしたりする可能性はゼロではありません。
自己判断で薬を使用するのはやめましょう。
治療を途中でやめる
円形脱毛症の部分に発毛が認められると、治療を途中で止めてしまう人がいます。
少しずつ発毛が認められるようになっても、発毛サイクルが完全に元に戻るまでには2~6年と長い時間がかかります。
円形脱毛症を発症して半年以内は治療効果が現れやすく、症状の回復が見込める可能性が高い時期です。
せっかく治療効果が期待できる時期に治療を途中で止めてしまうと、発毛サイクルを完全に回復させることができないかもしれません。
一番症状の軽い「単発型」の人の約80%が1年以内に治るといわれていますが、残りの20%の人は治らなかったり、治っても再発したりすることもあります。
「もう治療は終わりです」と医師から告知があるまでは、治療を止めないようにしましょう。
円形脱毛症の治療費は保険適応になる?
円形脱毛症の治療費は「保険適応になるケース」と「そうではないケースが」あります。それぞれについて、簡単に解説します。
保険適応になるケース
円形脱毛症の治療で保険適応になるケースは、次のような治療方法です。
- ステロイドを塗る・注射する・服用する
- 液体窒素治療
- 一部の紫外線療法
自己免疫疾患などの病気が原因で円形脱毛症を発症している場合には、免疫抑制剤などの薬も保険適応になります。
どの治療方法が保険適応になるかは、円形脱毛症の原因や程度によって異なりますので、医師に確認してから治療を受けましょう。
自費診療になるケース
円形脱毛症で自費診療になるケースは、次のような治療方法です。あわせて自費診療になる理由も解説しますので参考にしてください。
治療方法 | 自費診療になる理由 |
SADBEやDPCPなど一部の局所免疫療法 | 医薬品でなく試薬を用いて治療をするため |
抗ヒスタミン薬の内服療法 | 円形脱毛症に対する処方は保険適応が認められていないため |
冷却療法 | 円形脱毛症に対する有効性が確認できていないため |
紫外線療法(PUVA療法・エキシマライト・ narrow-band UVB療法) | 保険適応が認められていないため |
星状神経節ブロック療法 | 保険適応が認められていないため |
円形脱毛症の治療にかかる費用相場
円形脱毛症は保険適応の治療、そうではない治療によっておおむね費用相場が異なります。
相場は下記の通りです。
- 保険適応の場合は2,000〜4,000円程度(自己負担3割)
- 自費診療の場合は数万~数十万円
診察だけであれば500円程度(自己負担3割)のこともありますし、受ける治療方法によって金額は大きく異なります。
なお、新しい治療として注目されている「オルミエント®︎」は、保険適応の治療ですが1ヶ月あたり22,000~45,000円ほどと高額です。(3割負担の場合。2mgと4mgで異なる)
また、適用が重症化した円形脱毛症のみとなっているのが現状です。
治療を受ける際は保険診療か、自費診療かも事前に確認しておくと安心でしょう。
円形脱毛症の治療費は医療費控除を受けられる?
円形脱毛症は病気のため、医療費控除の対象となります。
医療費控除は、以下の場合に適用されます。
自分や家族の為に支払った1年間の医療費の合計金額が、10万円または総所得金額の5%のいずれか低い金額を超えた場合
参照:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
控除できる金額の上限は200万円までで、家族や配偶者などの医療費も合算できます。
医療費控除はご自身で申請が必要です。医療費控除の明細書を作成し、確定申告書に添付する必要があります。
医療費も1年分まとめれば金額も大きくなります。
円形脱毛症の治療を受けている方で手続きが不安な方や疑問がある方は、税理士やお近くの税務署に確認しましょう。
なお、AGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性男性型脱毛症)の場合には、医療費控除の対象外になる可能性があるため注意が必要です。
円形脱毛症の治療でよくある質問
ここからは、円形脱毛症の治療でよくある質問3つをピックアップして回答します。円形脱毛症の治療に疑問を抱えている方は、ぜひ参考にしてください。
Q.円形脱毛症は市販の薬でも治療できますか?
おすすめしません。
ただし、円形脱毛症の治療に市販の育毛剤や内服薬を使用すると、脱毛を悪化させたり治りにくくしたりする可能性があるためおすすめできません。
円形脱毛症ができる原因は、お一人おひとりことなります。
原因にあわせた適切な治療をするために、市販の薬を使わず皮膚科や専門クリニックなどの医療機関を受診してください。
Q.円形脱毛症の進行が止まりません。理由はなんですか?
理由はいくつか考えられます。
- 治療を始めてから進行が止まるまでに1ヶ月のタイムラグがある
- 治療方法が合っていない
- 遺伝が原因で進行が止まらず重症化・慢性化している
円形脱毛症の進行が止まらないと感じたら、医師に相談し一緒に原因を考えてみるとよいでしょう。
円形脱毛症の治療は専門医に相談を
円形脱毛症の治療方法は、非常に多くの種類があります。
いずれの治療方法も、円形脱毛症の発症早期から始めることで高い効果が期待できるだけでなく、重症化や再発を予防できる可能性が高くなります。
円形脱毛症の早期改善・重症化予防には、発症の原因に合わせた適切な治療が欠かせません。
円形脱毛症でお悩みの方は、専門医への相談をご検討ください。