円形脱毛症は、橋本病などの甲状腺疾患を合併しやすいと言われています。
両者には「自己免疫の誤作動」という共通点がありますが、発症のメカニズムはいまも明らかにされていません。原因が解明されていないとはいえ、日々増え続ける抜け毛を見ていては精神的ストレスも大きくなる一方です。
そこで本記事では、円形脱毛症と橋本病の関係をわかりやすくまとめました。併発した場合の治療法についても解説するので、脱毛と甲状腺疾患でお悩みの方はぜひお読みください。
【監修】
リバイブAGAクリニック院長 内富 一仁
東北大学卒業後、名古屋セントラル病院にて従事。その後、都内AGAクリニックにて院長を勤めた後、リバイブAGAクリニックを開院。
円形脱毛症と橋本病は併発する可能性が高い
これまでの研究では、円形脱毛症と甲状腺疾患を併発する確率は8%であるとのデータが報告されています。
甲状腺疾患以外にも円形脱毛症を合併する疾患はいくつかありますが、そのほとんどが自己免疫疾患です。
参考:Muller SA, Winkelmann RK: Alopecia areata, an evaluation of 736 patients, Arch Dermatol, 1963; 88: 290―297.
円形脱毛症と橋本病が併発する原因
円形脱毛症と橋本病が併発するのは、甲状腺ホルモンの不足が理由と考えられています。
橋本病は自己免疫の異常によって甲状腺に炎症が起こる疾患です。甲状腺が炎症を起こすと甲状腺の機能が低下し、ホルモンの分泌量が減っていきます。
甲状腺ホルモンは髪や体毛の成長に欠かせないホルモンであるため、甲状腺ホルモンが不足する橋本病は円形脱毛症を合併しやすいと言われているのです。
橋本病以外で併発しやすい疾患
甲状腺疾患以外で円形脱毛症との合併率が高い疾患には次のものがあります。
疾患 | 症状 |
尋常性白斑 | 肌の色が白く抜ける |
全身性エリテマトーデス(SLE) | 顔面蝶形紅斑・発熱・倦怠感・関節痛・口内炎など |
関節リウマチ | 関節の痛み・腫れ・こわばりなど(朝に強く見られる) |
Ⅰ型糖尿病 | 疲労感・喉の渇き・水をたくさん飲む・多尿・吐き気・腹痛など |
重症筋無力症 | 全身の筋力低下・疲れやすい・まぶたが下がる・飲み込みにくいなど |
アトピー性皮膚炎 | 皮膚が赤くなる・かゆみ・乾燥・発疹・皮膚が厚くなるなど |
円形脱毛症と尋常性白斑の合併率は4%とのデータがあります。
上記以外では、ダウン症の患者様も円形脱毛症を併発しやすいと言われています。
参照:日本皮膚科学会ガイドライン「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」
橋本病の治療薬チラージンで抜け毛が減るのか
チラージンを服用すると抜け毛が改善する場合があります。
これは、チラージンが不足しやすい甲状腺ホルモンを補い、ホルモンバランスを整えることで得られる効果です。(チラージン自体に発毛作用はありません)
橋本病が治ると円形脱毛症も改善するのか
円形脱毛症と橋本病を併発している患者様は、橋本病の治療によって円形脱毛症も治癒に向かうケースが多く認められます。
橋本病は完治が難しい病気ですが、身体に合ったお薬で治療を続ければ症状のない状態を維持できます。
投薬によってホルモンバランスが安定すれば、円形脱毛症も改善する可能性があると言えるでしょう。
甲状腺疾患の髪の抜け方の特徴
甲状腺疾患になると、今までと比べて抜け毛の量が明らかに増えたと感じる患者様が多いようです。
抜け毛の増加に気付くきっかけはシャンプーやブラッシングで、大量の抜け毛にショックを感じる方は少なくありません。
円形脱毛症を併発すると、脱毛斑が2ヶ所以上に増えたり広範囲に広がったりするケースもあります。
橋本病になると脱毛に通えない?原則NGだが医師の判断次第では脱毛できる場合がある
橋本病をはじめ甲状腺の持病がある方は、原則として脱毛は受けられません。
甲状腺疾患は甲状腺ホルモンの変化によって、代謝機能にも影響を及ぼします。患者様によっては、肌の乾燥や多汗などの症状が認められる方もいます。
持病の有無に限らず、肌状態が不安定なままでは脱毛は受けられません。また服用中のお薬がある場合も、お薬や病気の種類では脱毛を断られるケースが多いです。
ただしクリニックによっては、医師が事前に診察した上で脱毛できる可能性があります。
また甲状腺疾患のかかりつけ医が承諾した場合に限り、施術をOKとするサロンもあるようです。(サロン脱毛のトラブルは自己責任となる場合が多いので、甲状腺疾患のある方はサロンではなくクリニックに相談することを推奨します。)
甲状腺疾患があっても家庭用脱毛器は使えるのか
家庭用脱毛器の取扱説明書には「薬を服用している間は使用してはいけない」という注意書きがあります。
甲状腺疾患は投薬によってホルモンバランスを整えるため、原則として家庭用脱毛器の使用はできません。
ただし甲状腺疾患でも投薬が必要ない方もいますので、そういった方は肌状態を確認の上で使用してもいいでしょう。
お薬の服用中に家庭用脱毛器を使えない理由は、お薬の種類によって肌が光刺激に敏感になり肌トラブルを引き起こす恐れがあるためです。
どうしても使いたいという強い希望がある方は、一度かかりつけ医に相談してみるといいかもしれません。(医師への相談なく使用することは推奨できません。)
首周りの脱毛は可能か
脱毛クリニックは、甲状腺疾患がある方への首への照射はNGとしている場合が多いようです。
脱毛器のレーザーが皮膚を通過し甲状腺に悪影響を及ぼすといったデータはないのですが、万が一のトラブルは避けたいという思いがあるのでしょう。
甲状腺疾患のかかりつけ医が脱毛を許可しても、脱毛クリニックのドクターに首はNGと断られたというお話もありました。
首の脱毛についてはクリニックによって考え方や対応が異なるため、詳しくは医師に相談することをおすすめします。
橋本病になると白髪が増える場合がある
橋本病になると、抜け毛以外にも白髪の増加が認められる場合があります。
甲状腺ホルモンは髪や体毛の発育に関わるホルモンなので、橋本病でホルモン量が不足すると髪の成長に影響を与える恐れがあります。
白髪のほか、寒気やむくみ、筋力の急低下といった体調の変化で橋本病が発覚したという方もいるほどです。
まとめ|円形脱毛症と橋本病を合併した場合は早期の治療を行いましょう
円形脱毛症と橋本病は、どちらも自己免疫の異常が原因で起こる病気です。
さまざまな研究によって両者は併発しやすいことがわかっています。併発した場合、橋本病が落ち着くと円形脱毛症も改善することも明らかにされています。
橋本病は完治が難しい病気ですが、適切な治療によって上手に付き合っていくことが可能です。円形脱毛症についても、早期に対処することで症状の悪化を抑えられます。
橋本病の患者様で、円形脱毛症の症状も認められる場合はできるだけ早く医療機関を受診しましょう。