「ストレスは万病のもと」ということわざは、髪や頭皮環境にも同じことがいえます。
強いストレスは髪の成長を妨げ、不安やイライラが長く続くと抜け毛が増加する原因となります。また、円形脱毛症の発症の引き金になるとも言われているため、抜け毛を予防するにはストレス対策をしっかりと行う必要があるでしょう。
この記事では、ストレスと抜け毛の関係をわかりやすくまとめました。
【監修】
リバイブAGAクリニック院長 内富 一仁
東北大学卒業後、名古屋セントラル病院にて従事。その後、都内AGAクリニックにて院長を勤めた後、リバイブAGAクリニックを開院。
ストレスで抜け毛が増えるのはなぜ?3つの原因
ストレスが育毛に悪影響を及ぼす主な原因は次の3つです。
- 自律神経の乱れ
- 自己免疫疾患
- ホルモンバランス
詳しい内容を解説します。
原因①自律神経の乱れ
私たちの体はストレスを感じると自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位になります。
自律神経は内臓や体温、血管など全身の働きをコントロールする機能のことです。日中、活動している間に活発になる交感神経と、夜間やリラックスしている時など体のメンテナンスを行う副交感神経の2つがあります。
ストレスで交感神経が働くと、血管が収縮して血行不良が生じます。髪は血液が運搬する栄養や酸素から作られるため、血の巡りが悪くなると髪の成長に悪影響を及ぼすのです。
自律神経失調症は薄毛の原因になる?
ストレスや不規則な生活は自律神経のバランスを乱し、心身にさまざまな変調をきたします。
この状態を自律神経失調症といい、具体的な症状に倦怠感や不眠、疲れやすさなどがあります。人によって抜け毛を訴える方もいるため、薄毛対策にはストレス解消が不可欠であるといえるでしょう。
原因②自己免疫疾患
自己免疫疾患とは、免疫系機能が誤作動を起こすことで体が自分の細胞や組織を攻撃してしまう疾患のことです。
原因は明らかにされていませんが、ストレスは自己免疫疾患を誘因する可能性があると言われています。事実、自己免疫疾患の患者様が抜け毛症状を訴えるケースは多く、円形脱毛症を併発する方も大勢いらっしゃいます。
円形脱毛症を併発する可能性の高い自己免疫疾患は次の通りです。
疾患 | 症状 |
甲状腺疾患 | 甲状腺ホルモンが分泌過剰な状態では動悸・多汗・手足の震え・イライラなど 甲状腺ホルモンが分泌不足な状態では脈が遅い・寒気・眠気・物忘れなど |
尋常性白斑 | 肌の色が白く抜ける |
全身性エリテマトーデス(SLE) | 顔面蝶形紅斑・発熱・倦怠感・関節痛・口内炎など |
関節リウマチ | 関節の痛み・腫れ・こわばりなど(朝に強く見られる) |
梅毒 | 発熱・倦怠感・頭痛・のどの痛み・リンパ腺の腫れなど |
原因③ホルモンバランス
女性の抜け毛は、ホルモンバランスの変化が原因である場合が多いです。
女性の体は妊娠や出産、更年期などでホルモンバランスが大きく変化します。
産後一時的に抜け毛が急増する分娩後脱毛症(いわゆる産後脱毛)は、妊娠〜出産にかけて増加した女性ホルモンが一気に減少するために起こる脱毛症です。
女性ホルモンは年齢とともに分泌量が減っていくため、加齢によって抜け毛の増加を感じる方も多いです。
ストレスが原因の抜け毛に見られる3つの特徴
育毛の妨げとなるストレスは、髪に次のような変化をもたらす場合があります。
- 抜け毛が急激に増える
- 抜け毛が細い・短い
- 毛根のふくらみが小さい
ストレスが髪に与える影響とその理由を詳しく解説します。
特徴①抜け毛が急激に増える
ストレスで自律神経のバランスが乱れると、全身の血管が収縮し血行不良を引き起こします。
血の巡りが悪くなると頭皮に栄養や酸素が十分に行き渡らず、育毛環境が妨げられます。その結果として抜け毛が増えることになるのです。
また、ストレスで眠りが浅くなると髪の成長に関わるホルモンの分泌量も減少します。
睡眠不足と血行不良の悪循環は、抜け毛対策をする上では細心の注意を払うべきポイントです。
特徴②抜け毛が細い・短い
髪の栄養不足は、細毛や切れ毛の原因となります。
ストレスで髪がパサパサしたり、髪が痩せたと感じる方は多いです。ご自身の抜け毛をじっくり観察し、以前よりも髪が細い、または短いと感じる場合もストレス対策が必要と言えるでしょう。
特徴③毛根のふくらみが小さい
寿命によって自然と抜け落ちた髪は、毛根が丸くふっくらしています。
一方、ストレスや栄養不足などで十分に成長できなかった髪は毛根が小さく、先端が尖っていたりいびつな形をしています。
ストレスによる抜け毛を防ぐには?3つの対策
ストレスによる抜け毛を予防するには、次の3つの方法が有効です。
- ストレス解消
- 生活習慣の改善
- ヘアケアの見直し
ここからはそれぞれの方法を詳しく見ていきましょう。
対策①ストレス解消
ストレスが原因の抜け毛は、ストレス解消で対策するのがもっとも効果的です。
ストレス社会に生きる私たちが、ストレスのまったくない生活を送るのは難しいかもしれません。しかし、ストレスの原因となる悩みや不安はその都度解消すれば、ストレスのたまりにくい日常を送れるはずです。
仕事や人間関係によるストレスは、趣味や適度な運動などで発散すると気分がすっきりして前向きな気持ちになれます。また対人ストレスは1人で悩むよりも、人に打ち明けた方が気持ちが楽になる場合もあります。
体調不良によるストレスは、無理に発散しようとせずゆっくり休むのがおすすめです。ヒーリング効果の高い音楽やアロマテラピーなどで、体の疲れを癒してあげましょう。
ご自身の性格に合った方法で、ストレスと上手に向き合っていきたいところです。
対策②生活習慣の改善
不安や悩みで頭がいっぱいになると、日々の生活が不安定になりやすいです。
健康の基本は栄養バランスのいい食事と良質な睡眠によって作られます。ストレスで精神的に疲れている時こそ、生活習慣の乱れを改善し心の安定を取り戻しましょう。
不眠症状がある方には、就寝前の入浴やストレッチをおすすめします。肌触りのいい寝具や間接照明も寝つき改善に効果的です。
毎日決まった時間に食事をとると生活サイクルを整えやすいです。食欲不振が気になる方は、気の許せる相手と外食を楽しむのもいいでしょう。
対策③ヘアケアの見直し
ストレスによる髪のダメージを軽減するには、シャンプーや育毛剤といったヘアケア用品もおすすめです。
洗浄力が穏やかなシャンプーは頭皮の乾燥を予防できますし、育毛剤は頭皮のかゆみやフケ対策にも有効です。
洗髪中に頭皮をもみほぐすようにマッサージすると血の巡りが促され、リフレッシュ効果も期待できるでしょう。
ストレスで円形脱毛症になるって本当?
長い間、円形脱毛症はストレスによって引き起こされるものと考えられてきました。
しかし、最近の研究でストレスは円形脱毛症の直接的な原因ではないことが明らかにされています。
円形脱毛症の原因として、近年もっとも有力視されているのが自己免疫疾患です。自己免疫疾患と円形脱毛症は、高い確率で併発することがわかっています。
もっとも、自己免疫疾患の発症にはストレスも関与していると言われており、ストレスと円形脱毛症がまったく無関係であるとは言い切れません。
ストレスがきっかけで円形脱毛症になる方もいますので、直接原因でないからといって油断はできないでしょう。
抜け毛の増加が止まらない時の対処法
抜け毛の増加が止まらず不安な時は、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
髪の悩みは生活習慣の見直しやヘアケアで改善する場合があります。しかし、抜け毛の原因次第ではセルフケアのみで薄毛の進行を止めるのが困難な場合もあるでしょう。
医療機関では、原因に合った治療が受けられます。抜け毛の増加を止めるのはもちろん、すでに薄毛が進行している頭皮を発毛させることも可能です。
AGAや円形脱毛症の症状が認められる方はとくに、早期の対策をおすすめします。
ストレスによる抜け毛が治るまでの期間
ストレス耐性は人によって異なるため、抜け毛が減るまでの時間をお伝えするのは少々難しいです。
治療薬を用いた場合ですと、効果を実感できるまでには6〜12ヶ月ほどかかると言われています。髪の成長スピードは1ヶ月約1cmなので、毛髪の変化に気付けるようになるには短くても数ヶ月はかかるでしょう。
ストレスと抜け毛にまつわるよくある質問
ストレスと抜け毛の関係について、患者様から多くいただくご質問とその回答をご紹介します。
Q.ストレスによる抜け毛は何科を受診すればいいですか?
強いストレスがある場合、まずは心療内科の受診をおすすめします。
ひと口に抜け毛といってもその原因はさまざまです。フケやかゆみなどの頭皮トラブルがあれば皮膚科を、生え際や頭頂部の抜け毛が顕著であれば薄毛治療を専門とする医療機関を受診しましょう。
公開日:
【医師監修】円形脱毛症は何科を受診すべき?治療内容を詳しく解説
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Q.ストレスで抜け毛が増えた気がします。1日の抜け毛は何本までが正常ですか?
1日あたりの抜け毛本数は50〜100本までが正常だと言われています。
環境が変化する春や、夏の紫外線ダメージが蓄積される秋は一時的に本数が増え、1日で200本近く抜ける場合もあります。
Q.高校生ですが抜け毛が気になります。治療は受けられますか?
抜け毛の種類によります。
円形脱毛症やアトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎による抜け毛であれば治療は可能です。AGAについては、原則として20歳以上でなければ治療は受けられません。
Q.女性特有の抜け毛はありますか?
女性特有の薄毛症状は、FAGAやFPHLと呼ばれます。
年齢やホルモンバランスの変化によって引き起こされるもので、早い方では30代から抜け毛が増えはじめます。
また、ポニーテールなどのヘアアレンジが原因となる牽引性脱毛症や、産後に抜け毛が増える分娩後脱毛症も女性に多く見られる薄毛症状の一種です。
まとめ|ストレス対策で抜け毛を予防しよう
ストレスは髪や頭皮環境にも悪影響を及ぼします。
ストレスの多い生活は抜け毛増加につながりますし、円形脱毛症の発症の引き金となる場合もあります。抜け毛や薄毛を予防するには、不安や悩みをためないようストレス対策を行うことが大切です。
セルフケアで改善しない場合は、早期に医療機関を受診することをおすすめします。ストレス対策と適切な治療を並行し、抜け毛や薄毛の悩み解消を目指していきましょう。