襟足(うなじ)の薄毛は自分では気づきにくく、知らないうちに症状が進行してしまっていることがあります。
とくに円形脱毛症は放置しておくと襟足だけでなく、頭部全体にまで広がる可能性があるため、早めの対処が重要です。
この記事では、襟足(うなじ)の薄毛の原因と考えられる円形脱毛症について、症状の特徴や早く治す方法を解説します。
【監修】
リバイブAGAクリニック院長 内富 一仁
東北大学卒業後、名古屋セントラル病院にて従事。その後、都内AGAクリニックにて院長を勤めた後、リバイブAGAクリニックを開院。
円形脱毛症の特徴と種類について
円形脱毛症は、円形または楕円形の脱毛斑が現れる症状です。ブラッシング中の抜け毛で自覚される方もいれば、他人に脱毛斑を指摘されて初めて気づく方もいます。
下記のような特徴的な症状が認められる場合、円形脱毛症の可能性が高いと言えるでしょう。
- 円形または楕円形の脱毛斑(はげ)がある
- 前触れなく一気に毛が抜ける
- 爪に小さな凸凹が見られる
- 抜け毛の毛根部分が細い、またはとがっている
- 髪の毛を引っ張ると簡単に抜けてしまう
また、円形脱毛症の症状は、脱毛斑の数や広がり方によって大きく5つに分類されます。
円形脱毛症の種類 | 特徴 |
単発型 | 1ヶ所のみ脱毛斑がみられる |
多発型 | 2ヶ所以上に脱毛斑がみられる |
蛇行型 | 側頭部から後頭部に向かって帯状の脱毛斑がみられる |
全頭型 | 頭部全体に脱毛斑が広がる |
汎発型 | 頭部だけでなく、眉毛やまつ毛など全身の体毛が抜け落ちる |
最も症状が軽い単発型であれば自然治癒する可能性が高いですが、多発型や全頭型など、重症化すると治療は長期化しやすい傾向にあります。
円形脱毛症に気づいた場合は放置せず、早めにクリニックまでご相談ください。
襟足(うなじ)の円形脱毛症の原因
円形脱毛症の原因はいまだハッキリとは解明されていませんが、以下に深い関わりがあるとされています。
- 自己免疫疾患
- ストレス
- アトピー素因
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
①自己免疫疾患
円形脱毛症は、自己免疫疾患で毛根の細胞がダメージを受けることによって起こると言われています。
自己免疫疾患とは、細菌やウイルスから身を守るための機能(免疫系機能)に異常が起こり、自身の身体を攻撃してしまう病気のことです。
自己免疫疾患には、円形脱毛症以外にもさまざまな形で現れる可能性があり、円形脱毛症と併発するケースも見られます。
<円形脱毛症との併発が考えられる疾患>
- 甲状腺疾患
- 尋常性白斑
- 全身性エリテマトーデス(SLE)
- 関節リウマチ
- 梅毒
爪に小さな凸凹ができる「爪甲点状陥凹」も免疫異常のひとつで、円形脱毛症のサインと言われています。
②ストレス
精神的なストレスは円形脱毛症を発症する引き金になると言われています。
アイスランド大学の研究によると、ストレスに関する精神疾患と診断された人は、後に自己免疫疾患と診断されるリスクが高いそうです。
参考:Association of Stress-Related Disorders With Subsequent Autoimmune Disease.
現代社会でストレスを完全に避けることは難しいですが、過度のストレスは体調にさまざまな悪影響を与えます。溜めすぎず、適度に発散することが大切です。
③アトピー素因
円形脱毛症はアトピー素因との関連が大きく、円形脱毛症を発症した方の4割以上がアトピー素因をもつと言われています。
参考:勝岡憲生:アトピー性疾患と円形脱毛症ーアトピー性円形脱毛症ー,Derma,1999; 23: 9-12.
アトピー素因とは、アレルギーを起こしやすい体質のことです。
アトピー素因は遺伝も影響するため、本人や家族に下記のようなアレルギー性疾患のある方は、円形脱毛症を発症しやすいと言えます。
- 気管支喘息
- アレルギー性鼻炎
- アレルギー性結膜炎
- アトピー性皮膚炎
ポニーテール結びが薄毛の原因に?牽引性脱毛症について
襟足(うなじ)の抜け毛は、牽引性脱毛症の可能性も考えられます。
牽引性脱毛症とは、髪の毛が引っ張られることによって起こる脱毛症のことです。
とくに女性の方は、ポニーテールや三つ編みなどの髪型を長期間続けることで、毛根に負担がかかり、髪の成長を妨げてしまう場合があります。
多くの場合、髪型を変えることで改善されるので、牽引性脱毛症の疑いがある方は試してみてください。
襟足(うなじ)の円形脱毛症を早く治す方法
円形脱毛症を早く治すには早期の治療と、頭皮環境を整えることが大切です。
- クリニックで治療を受ける
- ストレスをうまく解消する
- 生活習慣を改善する
- ヘアケアを正しく行う
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
①クリニックで治療を受ける
円形脱毛症は放置せず、クリニックで治療を受けるようにしましょう。
軽度であれば自然治癒する場合もありますが、放置によって重症化すると、治療が長期化しやすい傾向にあるからです。
円形脱毛症の治療には、以下のような方法があります。
治療方法 | 内容 |
ステロイド療法 | 注射や外用薬などによる治療 |
局所免疫療法 | 人工的にかぶれを起こし、免疫反応を抑制する治療 |
ミノキシジル外用療法 | 発毛促進効果のあるミノキシジルを塗布する治療 |
冷却療法 | ドライアイスや液体窒素を湿布し、脱毛斑を刺激する治療 |
紫外線療法 | 紫外線を照射する治療 |
治療法については下記の記事でより詳しく解説していますので、気になる方はぜひ参考にしてみてください。
②ストレスをうまく解消する
ストレスは自己免疫疾患を引き起こす原因となり、円形脱毛症を悪化させる可能性があります。
日頃からストレスを溜め過ぎないよう対策し、うまく解消する方法を見つけるようにしましょう。
円形脱毛症が目立つこと自体がストレスになる場合は、帽子やウィッグ(かつら)などを使って隠し方を工夫するのもおすすめです。
③生活習慣を改善する
円形脱毛症を早く治すには、生活習慣を改善し、健康で規則正しい生活を送ることが大切です。
十分な睡眠時間を確保することはもちろん、適度な運動や、食事の栄養バランスを見直すなど、できることから生活習慣を見直していきましょう。
なお、髪の毛の成長には亜鉛やタンパク質などの栄養素が良いと言われています。食事だけで摂取するのが難しい場合は、サプリメントなどを活用するのもよいでしょう。
④ヘアケアを正しく行う
抜け毛を減らし、髪が成長しやすい環境を整えるには毎日のヘアケアも大切です。
毎日丁寧にシャンプーを行い、頭皮を清潔に保ちましょう。
ただし、洗い過ぎは髪の毛に必要な皮脂まで落としてしまいます。乾燥によるフケやかゆみが生じるなど、頭皮環境を悪化させる原因となるので注意してください。
円形脱毛症は内臓の病気と関係がある?
円形脱毛症の症状は頭部や体毛の抜け毛のみです。内臓の病気ではないため、放置していても他の病気につながる心配はありません。
ただし、円形脱毛症は下記の自己免疫疾患と合併しやすいと言われています。
- 甲状腺疾患
- 尋常性白斑
- 全身性エリテマトーデス(SLE)
- 関節リウマチ
とくに甲状腺疾患は8%、尋常性白斑は4%の合併率があると言われています。
襟足(うなじ)の円形脱毛症についてのよくある質問
襟足(うなじ)の円形脱毛症にまつわる質問をまとめました。
Q.円形脱毛症になったらやってはいけないことはありますか?
日常生活で制限されることは特にありません。早く治すためにもストレスを溜めすぎないようにし、健康で規則正しい生活を送るようにしましょう。
ただし、科学的根拠が不確かな自己流の治療は、症状を悪化させる可能性があるため厳禁です。治療を希望する際は、必ずクリニックに相談してください。
Q.円形脱毛症に治る前兆はありますか?
円形脱毛症の回復期では、脱毛斑に産毛や白髪が生えてきます。これは毛根にある細胞の働きが徐々に戻りつつあるサインです。
回復するにつれて、少しずつ太く黒い毛が生えてくるようになります。
公開日:
襟足(うなじ)の薄毛は円形脱毛症?原因や早く治す方法について解説
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Q.コロナウイルスの後遺症で円形脱毛症になることはありますか?
コロナウイルスの後遺症で起こる脱毛症は「コロナ抜け毛」と呼ばれており、症状としては円形脱毛症よりも、休止期脱毛症に近いと言われています。
コロナ後に円形脱毛症になる方もいますが、そのほとんどは再発です。
コロナの後遺症で円形脱毛症を報告した人のうち95.1%が、過去に円形脱毛症になったことのある人だったという海外の研究結果もあります。
参考:Alopecia in patients with COVID-19: A systematic review and meta-analysis – JAAD International
参考:リバイブAGAクリニック「コロナ抜け毛とは?原因や治療方法を解説」
Q.円形脱毛症を見つけたら病院にいくべきでしょうか?
円形脱毛症を見つけたら、なるべく早い段階で病院に行くことをおすすめします。
円形脱毛症を放置することで脱毛斑が大きくなったり、数が増えたりする可能性があるからです。
円形脱毛症は、脱毛斑が小さく目立たないなどの理由で治療をしない方もいますが、重症化してからでは治療が難しく、長期化しやすい傾向にあります。
Q.円形脱毛症は何科を受診すればよいですか?
円形脱毛症の治療は皮膚科が専門です。近年では脱毛症・薄毛専門のクリニックも選択肢になります。
円形脱毛症は原因の特定が難しく、治療法も多岐にわたるため、円形脱毛症の症例が豊富なクリニックに相談するとよいでしょう。
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【医師監修】円形脱毛症は何科を受診すべき?治療内容を詳しく解説
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まとめ|円形脱毛症を見つけたら早めにクリニックへ相談を
円形脱毛症は円形や楕円形の脱毛斑、爪に現れる点状の凸凹などが特徴です。
軽度であれば自然治癒することもありますが、放置することで襟足(うなじ)だけでなく、頭部や体のさまざまな場所に広がってしまう可能性があります。
円形脱毛症かも?と思ったら早めにクリニックへご相談ください。