円形脱毛症は、性別関係なく発症する可能性のある症状ですが、
「女性特有の原因はあるの?」
「上手に隠す方法が知りたい」
と考えている女性も多いことでしょう。
この記事では
- 女性の円形脱毛症の原因
- 更年期障害と円形脱毛症の関係
- 円形脱毛症の治療方法と予防方法
について解説していきます。
【監修】
リバイブAGAクリニック院長 内富 一仁
東北大学卒業後、名古屋セントラル病院にて従事。その後、都内AGAクリニックにて院長を勤めた後、リバイブAGAクリニックを開院。
女性の円形脱毛症の原因
円形脱毛症の原因は、まだはっきりとは解明されていません。
一般的にはストレスが要因と考えられることが多いですが、原因として考えられるものは主に4つあります。
- ストレス
- ホルモンバランス
- 自己免疫異常
- アトピー素因
それぞれ解説していきます。
ストレス
円形脱毛症といえばストレスが原因と考える方も多いですが、現在では「ストレスはきっかけの1つである」という認識が一般的です。
精神的なストレスが直接的に円形脱毛症を引き起こすのではなく、精神的ストレスからくる交感神経の乱れが要因と言えるでしょう。
交換神経のバランスが乱れ、血管が収縮し頭部の血流が悪くなった結果、毛根が栄養不足になり頭髪が生えてこなくなります。
なお、ストレスは男女共通の円形脱毛症の原因です。
ホルモンバランス
女性ホルモンによる影響は、女性特有の円形脱毛症の原因と言えるでしょう。
女性のホルモンバランスの乱れは、体調にさまざまな影響をもたらします。
特に妊娠〜出産後の女性のホルモンバランスは大きく変化しており、体調に異変をもたらしやすいのです。
妊娠中に大きく増加したホルモンは、出産後に急速に戻ります。
さらに女性ホルモンは発毛促進の作用もあることから、出産後に急速に女性ホルモンが減少することで頭髪が抜けたり、生えてくるのが遅くなったりします。
その影響で産後脱毛(全体的な頭髪のボリュームが減る症状)や円形脱毛症を発症する女性がいます。
自己免疫異常
最近では自己免疫異常が円形脱毛症の原因として有力視されています。
自己免疫異常とは、本来は細菌やウィルスを攻撃し守ってくれるはずの免疫が、自らを攻撃してしまうということをさします。
免疫細胞のT細胞と呼ばれる細胞が、毛根を包んでいる毛皮という部分を攻撃してしまうことが要因ではないかと言われています。そのため、円形脱毛症そのものが自己免疫疾患の一つなのではとも言われています。
また、円形脱毛症の方は関節リウマチや甲状腺疾患、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患を併発している方も多いです。
アトピー素因
円形脱毛症の患者800人のうち、187人(23%)がアトピー性皮膚炎を併発していたという研究結果が海外で発表されています。
その中の患者200人のうち、患者本人や家族にアトピー素因があるものは108例(54%)、患者本人にアトピー素因があるものは82例(41%)です。
この研究から半分近くの確率で円形脱毛症患者本人またはその家族が、アトピー素因を保有していることがわかっています。
参考:Shellow WV, Edwards JE, Koo JY: Profile of alopecia
areata: a questionnaire analysis of patient and family, Int
J Dermatol, 1992; 31: 186―189
円形脱毛症に悩む女性は20代にも多い
円形脱毛症は20代の若い女性にも多い疾患です。
妊娠、出産に伴うホルモンバランスの変化が原因としてあげられるほか、ライフステージの変化から来るストレスや多忙さなど、さまざまな原因が考えられます。
若いから抜け毛の心配はいらないと思っている方も多いですが、20代、または子供でも、アトピー素因など要因があれば円形脱毛症になるリスクはあるのです。
40代や50代の女性は更年期の影響が多い
更年期に減少するエストロゲンという女性ホルモンは、薄毛の要因にもなるホルモンです。
このエストロゲンが更年期には閉経に向かって減少するため、40代、50代の女性は更年期の影響で円形脱毛症になりやすいという訳です。
日常生活での対処方法や隠し方
ここからは女性の円形脱毛症の方向けに、日常生活での対処方法や隠し方を紹介します。
- ヘアアレンジで隠す
- ウィッグを買う
- つけ毛をつける
それぞれ解説していきます。
①ヘアアレンジで隠す
症状が現れている部位によっては、髪を束ねることで、その部分で円形脱毛症の部分を隠すことができます。
たとえば頭頂部の脱毛が気になる方は、あえて頭頂部に髪の毛をあつめてお団子ヘアにしたり、横の脱毛が気になる方は、髪の毛を引っ張ってきて隠してポニーテールなどにすると良いでしょう。
後頭部の脱毛部位が気になる方は、低い位置で1つにまとめることで、隠しやすくなります。
ただ結び続けるのは頭皮に刺激を与え続けることになるので、なるべく外出時のみにしましょう。
②ウィッグを買う
今は以前と比べるとウィッグの種類も増えており、さまざまな色や長さのものが販売されています。
ウィッグを購入することで、新しいおしゃれの形として楽しむのも良いかもしれません。
ヘアピンで留めるタイプもあれば、帽子とセットになっているものなどもあります。職場用やプライベート用などわけてもっておくのも良いでしょう。
脱毛箇所が大きくても隠せるのは利点ですが、頭が蒸れやすい点がデメリットです。
頭髪の清潔のためにも、なるべく通気性が良いものを利用するか、長時間つけ続けるのは避けるようにしましょう。
③つけ毛をつける
エクステなどのつけ毛で髪の毛のボリュームを増やして隠すことも可能です。ウィッグのように全体的にかぶる訳ではないので、頭髪全体が蒸れるということはありません。
しかし一か所に貼り付けたり、ピンでとめたりして使用するので、長時間の使用は皮膚に刺激を与えてしまう可能性があります。
円形脱毛症の方がやってはいけないこと
円形脱毛症の方がやってはいけないことは、大きく分けると3つあります。
- 髪を洗う時に泡立てずにに洗う
- 乱れた生活リズムのまま生活を送る
- 頭皮に対して刺激が強いシャンプーを使う
いずれもすぐにできることなので、当てはまる場合は改善するように心がけましょう。
①髪を洗う時に泡立てずに洗う
泡立てずに髪を洗うことで、落とせるはずの汚れが落とせないどころか、シャンプーのすすぎ残しが起こる可能性があります。
また、強く洗いすぎて皮膚に刺激を与えてしまうのもよくありません。
だからといって、優しく洗いすぎると汚れが取れないので、泡立てて程よい力で洗い、頭皮の汚れを落とすのがベストです。
②乱れた生活リズムを送る
乱れた生活リズムは体だけではなく、頭髪の健康にも直結します。
毎日早寝早起きというのは難しいかもしれませんが、なるべく早く寝るようにするなど、生活習慣の改善を心がけましょう。
また各種ビタミンやミネラル、タンパク質も頭髪を作るのに大切です。食事もバランスよく摂取しましょう。
乱れた生活習慣の中でかかるストレスは、万病の元と言っても過言ではありません。ストレスによって交感神経が活性化し、毛細血管が収縮してしまい毛根の血行が悪くなってしまうと考えられているからです。
ストレスがたまらない生活を送るよう意識しましょう。
③頭皮に対して刺激が強いシャンプーを使う
使用するシャンプーも注意が必要です。
円形脱毛症の方の場合、シャンプーは洗浄力の優しいものを使うと良いでしょう。
具体的には弱酸性や無添加のシャンプーを使用するのがおすすめです。合成着色料やシリコン、エタノールなどの人工成分が入っているものはできるだけ避けましょう。
女性の円形脱毛症の治療
円形脱毛症の治療は多様な種類があります。
今回は「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」に「行うよう勧める〜行っていも良い」と明記してあり、かつ一般的な治療として用いられている3つの治療方法をご紹介します。
- 治療方法①軟膏や内服薬による治療
- 治療方法②ステロイドによる治療
- 治療方法③冷却・紫外線療法
治療方法①軟膏や内服薬による治療
肌のアレルギー反応や肌の炎症を抑えるために、内服薬や軟膏で治療を行う場合があります。
軟膏の場合、塩化カルプロニウムという脱毛防止、発毛促進の効果があるものが用いられます。これは日本皮膚科学会の雑誌では、セファランチンという内服薬と併用することで効果が期待できると記載されています。
アレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬、皮膚の炎症を抑えるグリチルリチン内服なども有効とされています。
なお、アトピー性皮膚炎などに処方されることのあるシクロスポリンA内服薬の服用は行わないほうがよいとされています。
参考:円形脱毛症に対するセファランチンと他剤の併用療法の有効性に関する検討(2013 年 123 巻 1 号 p. 9-15)
参考:日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
治療方法②ステロイドによる治療
ステロイドは炎症を抑えるもので、軟膏や注射などで用いられます。
注射は症状が顕著な症例に用いられることが多いものの、ステロイドは副作用も注意しなければなりません。
日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドラインによると、副作用としてニキビ(ざ瘡)や毛包炎があり、皮膚の萎縮、血管拡張、陥没のリスクがあるため、長期に使用するべきではないと記載されています。
参考:日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
治療方法③冷却・紫外線療法
液体窒素やドライアイスなどを脱毛している箇所に当て、免疫細胞の働きを抑えることで症状を抑える治療方法です。
紫外線療法は尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎治療でも用いられているもので、2週間に数回、患部に照射します。
紫外線照射によるヒリヒリとした痛みや、場合によっては水ぶくれが生じることがあります。日焼けの時の症状を想像するとわかりやすいでしょう。
円形脱毛症の予防方法
円形脱毛症は元々の体質も関係しているため、100%防ぐことは難しいかもしれませんが、日頃からできる予防方法・再発方法をご紹介いたします。
- 頭皮マッサージ
- ストレスを溜めない
①頭皮マッサージ
お風呂で髪を洗う際、一緒に頭をほぐすようにマッサージをするのがおすすめです。
マッサージの方法としては、耳の周りに指をおいて、頭皮を上に引っ張り上げるようなイメージです。また両手の指を頭の横につけてぐるぐる回すようにマッサージする方法もあります。
頭皮マッサージの際は傷つけないよう、爪を立てないようにします。
頭皮環境を健康に保てるよう、コツコツと根気よく続けましょう。
②ストレスを溜めない
日常的にストレスをなるべく溜めないように生活することが大切です。
忙しい日々の中でストレスを溜めないことは難しいですが、とくに円形脱毛症においてはストレス対策への心がけが必要です。
休息と遊び、仕事のバランスをとりながら、ストレスを溜めないようにしましょう。
まとめ|女性の円形脱毛症を早く治すためには
女性の円形脱毛症は子供からお年寄りまで年齢関係なく発症します。
原因もさまざまで、特定することが難しいのも特徴です。
症状が重症化してしまうと、治療をしても改善に数年かかかったり、場合によっては完治できず繰り返したりする方もいらっしゃいます。
早期に専門医に相談し、治療の方針を立てることで、対策を考えていくことができます。
普段の生活と変わらずに過ごすためにも、気になる症状がある方は早めの受診をおすすめいたします。