円形脱毛症が再発した時、あのつらい時間をまた乗り越えなければいけないと思うと強いストレスを感じるものです。
円形脱毛症は治癒までには時間がかかりますし、患者様によって脱毛斑が増える方もいます。脱毛斑があること自体がストレスとなり、症状が悪化するのでは?と不安を感じる方もいるでしょう。
円形脱毛症の再発でお悩みの方のため、この記事では円形脱毛症を繰り返す原因と再発を防ぐ方法をわかりやすくまとめました。
【監修】
リバイブAGAクリニック院長 内富 一仁
東北大学卒業後、名古屋セントラル病院にて従事。その後、都内AGAクリニックにて院長を勤めた後、リバイブAGAクリニックを開院。
円形脱毛症を繰り返す4つの原因
円形脱毛症を繰り返す理由は、持病や体質的なものと考えられています。
具体的な原因は次の4つです。
- 自己免疫疾患
- 遺伝
- アトピー素因
- 精神的ストレス
それぞれの原因を詳しく解説します。
①自己免疫疾患
私たちの身体には、異物(非自己)の侵入を防ぐために免疫系機能が備わっています。
本来の攻撃対象は細菌やウイルスなどですが、何らかの理由で免疫系機能に異常が生じると身体の一部を攻撃します。これが自己免疫疾患です。
円形脱毛症では、免疫系機能の異常によって健康な毛包が異物として認識され、その結果脱毛が生じてしまうのです。
円形脱毛症を併発しやすい自己免疫疾患には、次の種類があります。
疾患 | 症状 |
甲状腺疾患(橋本病・バセドウ病) | 甲状腺ホルモンが分泌過剰な状態では動悸・多汗・手足の震え・イライラなど甲状腺ホルモンが分泌不足な状態では脈が遅い・寒気・眠気・物忘れなど |
尋常性白斑 | 肌の色が白く抜ける |
全身性エリテマトーデス(SLE) | 顔面蝶形紅斑・発熱・倦怠感・関節痛・口内炎など |
膠原病 | 関節の痛み・腫れ・こわばり・発熱・疲労感・筋力の低下・紅斑・紫斑・レイノー現象(寒さで指先が白くなる)など |
重症筋無力症 | 眼瞼下垂・複視・筋力の低下・疲労感など |
②遺伝
円形脱毛症は、家庭内での発症率が高い傾向にあることがわかっています。
円形脱毛症になりやすい体質が遺伝するといわれ、関係が近いほど発症率が高くなるという研究結果もあります。
最新の大規模疫学調査(中国)では、AA患者の8.4%に家族内発症があり、患者との関係(親等)が近いほど発症率が高く、欧米の調査でも1親等内でのAA発症は一般に比べて10 倍である。
引用元:日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2017年版
※AA=円形脱毛症
円形脱毛症に関する遺伝子がある方は、円形脱毛症になりやすく発症の可能性も高いと考えられるでしょう。
③アトピー素因
アトピー性皮膚炎や花粉症(アレルギー性鼻炎や結膜炎)、気管支喘息といったアレルギー症状が起こりやすい体質をアトピー素因といいます。
これまでの研究では、円形脱毛症の患者様の半数以上がアレルギー性疾患を合併しているとの報告があります。以下は円形脱毛症診療ガイドライン内にある、円形脱毛症とアトピー素因の確率をまとめたものです。
円形脱毛症患者200例のうち、患者本人または家族にアトピー素因がある | 54%(108例) |
円形脱毛症患者200例のうち、患者本人にアトピー素因がある | 41%(82例) |
円形脱毛症患者200例のうち、アトピー性皮膚炎の合併がある | 23%(46例) |
アトピー素因は遺伝的要因が深く関係するため、アレルギー体質の方は円形脱毛症になりやすいと考えられます。
以上の理由から、円形脱毛症になりやすい体質の方は軽快と増悪を繰り返す可能性があるでしょう。
④精神的ストレス
厳密にいうと、ストレスは円形脱毛症の直接原因ではありません。
しかし、円形脱毛症の患者様のほとんどが何かしらのストレスを抱えています。ストレスが誘因となり、円形脱毛症を発症する可能性は否定できないでしょう。
ストレスを感じると自律神経が乱れ、免疫系機能に誤作動が生じることがあります。免疫系機能の異常は自己免疫疾患を引き起こすと考えられているので、円形脱毛症を繰り返しやすい方はストレスにも注意しなければなりません。
ストレスの自覚なく円形脱毛症になる方もいれば、強いストレスを感じた後に円形脱毛症になる患者様もいます。また、円形脱毛症に限らず、ストレスで抜け毛が増加する方も多いです。
女性の円形脱毛症はホルモンバランスが関係?
妊娠〜出産までの間、女性の体内ではホルモンバランスが大きく変化します。
産後一時的に抜け毛が急増する(分娩後脱毛症)のも、ホルモンバランスの変化によるものです。産後の女性の中には、分娩後脱毛症と円形脱毛症を併発する方がいます。
円形脱毛症の直接原因には、自己免疫疾患や遺伝、アトピー素因などがあげられます。しかし、発症の誘因としてホルモンバランスやストレスも関係あると考えられるでしょう。
円形脱毛症が治癒するまでの期間
円形脱毛症による脱毛斑が小さくなる(少なくなる)までにかかる時間は、患者様によって実にさまざまです。
単発型であれば1年ほどで改善するケースが多く、症状が軽度の方だと6ヶ月ほどで治癒するケースもあります。一方、全頭型や汎発型の治療には数年を要することもあります。
治療にかかる時間には個人差があり、上記の期間はあくまで目安です。
頭皮のかゆみは円形脱毛症が治る前兆?
円形脱毛症が快方に向かう過程で、頭皮にかゆみが生じる方がいます。
かゆみの理由としては髪の生えはじめに生じる摩擦や、伸びた毛先が頭皮に当たることなどが考えられます。
なお、円形脱毛症でかゆみは必ずしも生じるものではありません。かゆみがなくても治癒する方もいますので、「治りかけの前兆としてかゆみが起こりうる」とご理解ください。
円形脱毛症の再発を防ぐ方法はあるのか
円形脱毛症を根本から治す治療法は、今もなお確立していません。
一旦症状が改善しても、数ヶ月でふたたび脱毛がはじまる患者様は多いです。1度目の発症から5年で約4割の患者様に再発が見られると言われるほど、確率としてはやや高い傾向にあります。
再発防止に特化した治療法はありませんが、これまでの研究により高い有効性が確認された治療法はあります。
推奨される治療法は体質や症状、年齢によって異なるため、医師に相談の上で自分に合った方法を見つけていきましょう。
円形脱毛症を早く治す方法
円形脱毛症を繰り返しやすい体質の方には、再発予防として次の3つの方法をおすすめします。
- 適切な治療を受ける
- 生活習慣を見直す
- ストレスを解消する
具体的な内容も見ていきましょう。
①適切な治療を受ける
円形脱毛症を早く治すには、早期に医療機関を受診することが大切です。
脱毛斑が小さい、または数個程度と少ない方だと自然治癒が見込める場合があります。しかし、円形脱毛症になると脱毛斑があること自体に強いストレスを感じますから、何も対処しないのはあまりおすすめできません。
円形脱毛症を繰り返しやすい体質は、脱毛斑が大きくなったり数が増えたりすることもあります。
体質や症状に合った治療法を知るという意味でも、できるだけ早く専門医に相談することをおすすめします。
②生活習慣を見直す
栄養バランスのいい食事や質の高い睡眠、適度な運動など、健康的な生活習慣は抜け毛の予防につながります。
野菜を多めに摂取する、夜ふかしを控えるなど、すぐにできることからはじめていきましょう。
③ストレスを解消する
ストレスは円形脱毛症だけでなく、心身の健康に影響を及ぼすものです。
真面目な方やなかなか本音を打ち明けられない方は、無自覚のうちにストレスを溜め込んでいると言われています。オン・オフの切り替えが苦手で、物事をネガティブにとらえがちな方もまた、ストレスを感じやすい傾向にあります。
ストレスが円形脱毛症の引き金とならないよう、自分に合った発散方法で心のバランスを保つことを心がけましょう。
円形脱毛症の再発にまつわるよくある質問
最後は、繰り返し円形脱毛症になった患者様から寄せられたご質問にお答えしていきます。
Q.内臓の病気があると円形脱毛症を繰り返しやすいですか?
内臓疾患と円形脱毛症の関係を示す有力なエビデンスはありません。
円形脱毛症を繰り返しやすい体質の患者様は、内臓の病気ではなく自己免疫疾患であることが多いです。
Q.多発性の円形脱毛症が治る確率はどれくらいですか?
円形脱毛症の発症から1年以内であり、かつ脱毛斑が少数である場合、約80%の患者様が1年以内に治癒するとの結果が報告されています。
多発性のみの確率は報告がありませんが、脱毛斑が大きい(多い)ほど治癒までに時間がかかると言われています。海外では、全頭型や汎発型に移行した場合の回復率はかなり低くなるという見方もあるようです。
公開日:
多発型の円形脱毛症とは?多発型円形脱毛症の症状や原因、取るべき食事を紹介
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Q.円形脱毛症を繰り返す人がやってはいけないことはありますか?
円形脱毛症の発症はストレスが引き金となることがあるため、日々の生活でストレスを溜めないよう注意しましょう。
まとめ:繰り返す円形脱毛症は早めの治療を
遺伝やアトピー素因が発症原因となる円形脱毛症は、患者様の体質によって再発を繰り返す場合があります。
症状が軽度であれば自然治癒する場合もありますが、患者様によっては脱毛斑が増えたり広範囲に広がる方もいます。繰り返す円形脱毛症でお悩みの方は、早期に医療機関を受診しましょう。