円形脱毛症患者の約20%は、15歳以下の子供であると言われています。
最近では小児の円形脱毛症のご相談が増えております。小児の円形脱毛症は大人よりも重症化する割合が高く、予測も困難です。症状が急に広がったり、治療しても思うように改善が見られずセカンドオピニオンを希望してご来院される方も増えております。
この記事では、子供の円形脱毛症の原因や治療法について解説いたします。
【監修】
リバイブAGAクリニック院長 内富 一仁
東北大学卒業後、名古屋セントラル病院にて従事。その後、都内AGAクリニックにて院長を勤めた後、リバイブAGAクリニックを開院。
子供が円形脱毛症になるのはなぜ?3つの原因
円形脱毛症は小児と大人では性質が違います。
この記事では、小児ならではの特徴を中心に述べさせていただきます。
一般論に関しては簡潔な内容となっておりますので、円形脱毛症の原因や治療、生活習慣についてより深く知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
円形脱毛症の発症原因として考えられるのは次の3つです。
- 自己免疫疾患
- アトピー素因
- 遺伝
具体的な内容を解説します。
原因①自己免疫疾患
円形脱毛症の発症原因として、近年もっとも有力視されているのが自己免疫疾患です。
自己免疫疾患とは、何らかの理由で免疫系機能が誤作動を起こし、自分の身体を攻撃してしまう疾患のことです。
円形脱毛症においてはTリンパ球が毛包を異物として認識し、健康な髪にダメージが加わることで脱毛が生じると考えられています。
参考:日本皮膚科学会ガイドライン「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」
なお、自己免疫疾患の発症理由については未だ不明瞭な部分が多く、原因は明らかにされていません。
アトピーを含めた自己免疫異常自体、小児の方のほうが重症化しやすかったり、症状が複雑であることが多いです。
特にアトピーは大人になると軽症化する方も多くおられます。小児の円形脱毛症が複雑であるのも円形脱毛症が自己免疫疾患の1つであることが背景にあると考えられます。
ストレスは円形脱毛症の原因ではない?
円形脱毛症と聞いて患者様のストレスを心配される方は多いのですが、ストレスは円形脱毛症の直接原因ではありません。
真面目なお子さんほど抱え込んでしまう傾向にあるため、親御さんのサポートで心の負担をしっかりと取り除いてあげましょう。学校に通っているお子さんは、先生と相談しながらストレスケアを行うのもおすすめです。
小児の円形脱毛症の患者様にありがちなのは、親御様やお子様が自責の念に駆られたり、メンタル的にうつ状態や学校に行きたくないなどがあります。
ストレスが原因かもしれないというのがストレスになり悪いスパイラルに陥ることがあります。ストレスは一因ですが、それがすべてではありません。難しいとは思いますができるだけ気にしないのが一番です。親御様やお子様が悪いわけではありません。
原因②アトピー素因
以下の既往歴、または家族歴があると円形脱毛症の発症率が高いことがわかっています。
- アトピー性皮膚炎
- 気管支ぜんそく
- アレルギー性鼻炎
- 結膜炎
上記の疾患を持っていることをアトピー素因といいます。
免疫系機能は本来、ウイルスや細菌といった外部からの侵入者のみに働くものです。しかし、アトピー素因の場合は花粉やハウスダスト、食品などにも過剰に反応してしまいます。
また、アレルギーに関する抗体(IgE抗体)を作りやすい体質の方も、そうでない方に比べて円形脱毛症になりやすい傾向にあります。
関連記事:アトピーだと円形脱毛症になりやすい?アトピー素因と脱毛症の関係
原因③遺伝
中国で行われた大規模な調査では、円形脱毛症患者の8.4%に家庭内発症があったとのデータが報告されています。
家族間の関係が近ければ近いほど発症率は高くなり、一卵性双生児においては55%と高率です。
参考文献:)Yang S, Yang J, Liu JB, et al: The genetic epidemiology
of alopecia areata in China, Br J Dermatol, 2004; 151:16―23.
アレルギー体質と同様、円形脱毛症になりやすい体質もまた遺伝する確率が高いと言えるでしょう。
円形脱毛症のタイプ
円形脱毛症は脱毛斑の数や範囲などによって、大きく次の5つの種類に分けられます。
小児の円形脱毛症は軽症のまま改善する場合もありますが、重症化したり脱毛を繰り返したりする場合が多いです。脱毛範囲が広くなる方の割合は大人よりも多くいらっしゃいます。
必ず重症するわけではありませんが、中程度で済む方の割合が少なく、進行の予測が難しいのも小児の円形脱毛症の特徴です。当院でも初診時軽症に見えるケースでも、今後重症化するかもしれない可能性を考えて診察に当たらせていただいております。
一般的な治療について
円形脱毛症にはさまざまな治療法があります
- ステロイド外用療法
- セファランチン内服療法
- 局所免疫療法
- 紫外線療法
- 液体窒素療法
ここからはそれぞれの治療法の特徴や起こりうる副作用を解説します。
治療法①ステロイド外用療法
脱毛斑が1つのみ現れる単発型、または融合傾向のない多発型の円形脱毛症に行われます。
1日1〜2回脱毛斑にステロイドを塗布するだけなので、比較的簡単にはじめられます。
日本皮膚科学会が作成した円形脱毛症の診療ガイドラインでは、推奨度がもっとも高い(B:行うよう勧める)治療法です。
ステロイド外用の長期使用では、皮膚の萎縮や血管拡張、毛包炎などの副作用が起こる可能性があります。治らず何年もステロイド外用続けてらっしゃる人もいますが、他の治療と並行してできるだけ短期間に円形脱毛症の治療を終え、ステロイド外用期間も短くしていくのが重要になります。
治療法②セファランチン内服療法
円形脱毛症(単発型や多発型)やひこう性脱毛症、放射線による白血球減少症などの治療に用いられる内服薬です。
末梢血管の拡張作用により、毛根に栄養を供給することで発毛効果が期待できます。小児の場合年齢体重により投与量の調整が必要になります。
治療法③局所免疫療法
脱毛斑にかぶれを起こし、免疫反応を抑えることで発毛を促す治療法です。
円形脱毛症の治療では第一選択肢として行うよう推奨されており、年齢を問わず誰でも受けられます。
人工的にかぶれを起こすことから、接触性皮膚炎やじんましんが起こる場合があります。
治療法④紫外線療法
脱毛斑に紫外線を照射し、免疫反応を抑える治療法です。
照射する紫外線の波長によっていくつか種類があります。
紫外線療法の種類 | 特徴 |
ナローバンド療法 | 波長が311nm付近の紫外線(UVB)を照射する |
エキシマレーザー療法 | 波長が308nmの紫外線(UVB)を照射する |
紫外線療法で起こりうる副作用には皮膚の赤みや色素沈着、ほてり感などがあり、光線過敏症のある方には行えません。治療頻度は週1〜2回です。頭皮の侵襲に加え来院頻度が極めて多くなるのが欠点になります。
治療法⑤液体窒素療法
液体窒素を使いますがドライアイスを使うこともあります。綿棒などを使い脱毛部位を冷却します。
これにより免疫細胞の働きを抑えて発毛を促します。治療には軽い痛みを感じます。
円形脱毛症治療については下記の関連記事も参照ください。
小児の円形脱毛症、実際のところは?
円形脱毛症自体が大人でもはっきりとした治療法は確立しておりません。
特に小児の円形脱毛症は、大人よりも千差万別な変化をきたすことが多く、より治療しにくい重症なケースが多いのが実際のところです。
前項①ステロイド外用や、②セファランチン内服は効果自体はありますが、パワーが弱くこれら単体では難しいこともあります。単発の小さいものですと改善の可能性はありますが、重症例では治療強度が不足することもあります。
③局所免疫療法・④紫外線療法液・⑤液体窒素療法については、もう少し侵襲の強い治療になります。イメージとしてはパソコンを無理やり再起動するように、免疫を一度リセットして発毛を期待するような治療です。
治療課題としては、これらを行っても治らない方が多いことや、何度も治療を繰り返す必要があること、度重なる高侵襲な治療で頭皮に悪影響をもたらすことなどがあげられます。
小児の方が重症化しやすい傾向にあるにもかかわらず、副作用の観点から治療自体はあまり攻めた治療を選択できないことも、小児の円形脱毛症治療の難しいところになります。
円形脱毛症専門クリニックとしての取り組み|リバイブAGAクリニックの治療
小児の円形脱毛症は重症例が多く、重症の多発型脱毛症、全頭型脱毛症、汎発型円形脱毛症が多くなっております。放置してるとあっという間に広がってしまう方も多くおられます。
このようなケースでは、強い治療をしたいところですが厄介なことに副作用についてもより慎重に配慮する必要があるため、侵襲が強い治療がしにくいことが問題点としてあげられます。また、侵襲が強い治療は痛みが強く、お子様が治療に耐えられないことも悩ましいところです。
当院では円形脱毛症でのご来院が多く、多数の症例実績がございます。また、当院では、治療に際して頭皮が瘢痕化するようなハイリスクな治療は行っておりません。
一括りに小児の円形脱毛症として扱うのではなく、年齢や体格によって治療内容や薬の容量を調整させていただいております。効果の高い注入療法を行っておりますが、針を極めて微細なものにするなど、効果と侵襲の少なさ(痛みの少なさを)両立した独自の治療を行っております。当院の治療において、現在までのところ皮膚の陥没や瘢痕化などの不可逆的な副作用は起きておりません。
また小児の円形脱毛症は予後の推測が困難です。
通常円形脱毛症はAGAと違い、再発がなければ治療を終了することができます。ただし、初発が15歳未満の方は再発率が通常の方もよりも高い印象です。ただ治すだけではなく、注意事項や起こりうる事象についてきちんとお伝えすることが必要だと考えております。苦渋の決断ですが年齢によっては治療をお断りし、経過観察を勧めることもございます。
小児の円形脱毛症についてのご相談は、可能な限りご両親共に来ていただくことを推奨しております。カウンセリング時間も二時間の枠でゆったりとらせていただいております。
小児の円形脱毛症は不登校や鬱状態につながることも多く、お悩みのご相談やできる範囲でのメンタルケアにも努めさせていただいております。
子供の円形脱毛症はセルフケアで改善できる?3つの予防法
結論として言うと生活習慣の改善だけで円形脱毛症が治るわけではありません
ただ最大限できることとしてご家庭内でできる方法が3つあります。
- 栄養バランスのいい食事
- ストレス対策
- 頭皮ケア
具体的な方法も解説します。
予防法①栄養バランスのいい食事
発毛環境を整えるには、まず日々の食生活の見直しからはじめましょう。
以下の表は、髪の成長に欠かせない3つの栄養素と多く含む食品をまとめたものです。
栄養素 | 特徴 | 多く含む食品 |
タンパク質 | 髪の主成分であるケラチンを構成する。 タンパク質不足は抜け毛や薄毛、 切れ毛などのトラブルが増えやすくなる | 肉類・魚介類・卵類・ 大豆製品・乳製品など |
ミネラル(亜鉛) | 体をつくるのに欠かせない栄養素。 必須ミネラルの一種である亜鉛は ケラチン生成をサポートをする | 牡蠣・豚肉・きなこ・ 焼き海苔・アーモンドなど |
ビタミン | 髪と頭皮を健やかに保つ。 ビタミンA・B2・B6・C・Eは育毛効果が高い | 豚肉・緑黄色野菜・果物・ 納豆・卵など |
健康な髪は日々の食事から作られます。上記の栄養素を中心に、バランスのいい食事で体の内側から育毛ケアを行いましょう。
予防法②ストレス対策
自分の感情をうまく言葉にできない子供は、そのもどかしさから些細なことでストレスを感じやすいと言われています。
真面目なお子さんほど抱え込んでしまう傾向にあるため、親御さんのサポートで心の負担をしっかりと取り除いてあげましょう。学校に通っているお子さんは、先生と相談しながらストレスケアを行うのもおすすめです。
小児の円形脱毛症の患者様にありがちなのは、親御様やお子様が自責の念に駆られたり、メンタル的にうつ状態や学校に行きたくないなどがあります。
ストレスが原因かもしれないというのがストレスになり悪いスパイラルに陥ることがあります。ストレスは一因ですが、それがすべてではありません。難しいとは思いますができるだけ気にしないのが一番です。親御様やお子様が悪いわけではありません。
子供の円形脱毛症対策にかつらは有効か?
周囲からの指摘やからかいなどで本人が強いストレスを感じているようであれば、かつらやウィッグなどで対処するのはいいでしょう。
反対に、お子さんが脱毛斑を気にしていなければ無理にかつらを着用させる必要はありません。
子供の円形脱毛症は、親御さんの精神的負担も大きくなりがちです。「なぜわが子が」「何が悪かったのか」と自分を追い詰めてしまう方もいるのですが、そもそも円形脱毛症の原因は完全には解明されていません。
症状を過度にかばおうとすると、かえってお子さんの不安を強くしてしまう可能性があります。お子さんの性格によっては、今まで通り接してあげる方が自身の心の安定を取り戻しやすい場合もあります。
子供の円形脱毛症については、本人の様子をしっかりと観察しながらベストな方法を見つけていきましょう。
予防法③頭皮ケア
抜け毛がでるからとシャンプーを控える方がおられます。お子様は新陳代謝が良く、皮脂などの汚れがでやすくなっております。シャンプーを2日に1回にしてもその1回でまとめて抜けるだけです。
洗髪中は抜け毛が多いと感じますが、脱毛を恐れて洗髪の回数を減らす必要はありません。洗髪の頻度は1日1回までとし、頭皮の清潔を保ちましょう。
シャンプーとしてはあまり刺激が強くないシャンプーを使うのが良いです。
当院の小児の円形脱毛症の治療実績
中学三年生の時に500円硬貨程度の大きさで初めて円形脱毛症を発症し、その後も発症を繰り返し今までで一番悪化した状態になりご来院されました。
皮膚科で週1回ペースで1年間レーザー治療を受けてきたそうですが、改善が見られなかったとの事です。
当院では、注射治療・内服薬・外用薬を用いたオリジナルのハイブリッド治療で、開始から3ケ月目より徐々に発毛が見られ、治療終了時にはほぼ完治できました。
円形脱毛症はお一人で悩まず、気軽にご相談ください
円形脱毛症は皮膚科や小児科でも対応自体はしております。ただし、数ある病気の一つとして扱われてしまうことが多いです。小児の円形脱毛症は大人と比べて非常に難解なのが実際のところです。
重症例になりやすい傾向があるにも関わらず、できるだけ侵襲の少ない治療を選択して行う必要があることも小児の治療で難しいところです。使える薬にも一部制限があるなど、治療難易度が大人に比べて高くなります。
当院は円形脱毛症も扱う髪の専門クリニックとして多数の治療実績がございます。
ご来院者の半数程度は他で治らなかった等のセカンドオピニオンとしてお越しになります。
お子様の円形脱毛症は本人だけの悩みではなく、ご家族としての悩みになります。ご相談は無料で承っておりますので、どうぞお気軽にお問合せください。