円形脱毛症は、髪の一部分が円形や楕円形に突然抜けてしまう病気です。
子どもからお年寄りまで、誰でも発症する可能性があります。円形脱毛症の初期症状に気づかなかったりそのまま放置したりすると、脱毛が頭皮全体に広がったり、髪以外の毛も抜けてしまうことも。
実は、円形脱毛症は初期の段階で正しい対処をすれば、進行を抑えられます。この記事では、円形脱毛症の初期症状や特徴、見分け方や進行させないための方法を紹介します。
【監修】
リバイブAGAクリニック院長 内富 一仁
東北大学卒業後、名古屋セントラル病院にて従事。その後、都内AGAクリニックにて院長を勤めた後、リバイブAGAクリニックを開院。
円形脱毛症の初期症状|特徴や予兆を解説
円形脱毛症の初期症状として、一番特徴的なものは突然抜け毛が増えることです。
正常なヘアサイクルの人は平均50~100本程度、毎日髪が抜けています。そのうちの6割程度は、シャンプーの際に抜けます。
シャンプーの際にごっそりと毛が抜けたり、シャンプー以外のときにも抜け毛が増えたりした場合は、円形脱毛症を発症しているかもしれません。
そのほかにも、円形脱毛症の初期には次のような予兆が現れるケースがあります。
- 頭皮の赤み
- 頭皮のかゆみ
- 頭皮の違和感
- ぽっこりとした赤い湿疹
- 髪を引っ張ると局所的にごそっと髪が抜ける
- 爪のでこぼこ
「脱毛の予兆なのに、なぜ爪のでこぼこが関係あるの?」
このように思われた方も多いかもしれません。
「爪のでこぼこ」は誰の爪にもできるもので、外的刺激や栄養状態・加齢などが原因でできることが有名です。
しかしでこぼこだけでなく「ぽつぽつと点のようなへこみ」を見つけたら要注意。
それは、円形脱毛症のサインかもしれません。
「ぽつぽつと点のようなへこみ」を医学的には「爪甲点状陥凹(そうこうてんじょうかんおう)」といいます。
爪甲点状陥凹は、円形脱毛症の原因の1つである免疫の異常で現れる症状です。免疫システムに異常が起こったことで、きれいな爪が生えにくくなってしまいます。
爪甲点状陥凹がみられる時期と、円形脱毛症の発症時期や再燃時期が一致しているケースが多いといわれています。
「抜け毛が増えたかも?」「円形脱毛症かもしれない」と思ったら、爪にぽつぽつとしたへこみがないか、いますぐチェックしてみましょう。
円形脱毛症は放っておくとどうなる?治るまでの期間は
円形脱毛症は放っておいてもよいのでしょうか。放置してしまうことでどのようなことが起こる可能性があるのか、また治るまでにどのくらいの期間が必要かを解説します。
円形脱毛症は小さければ放置してもよいのか
小さいからといって、円形脱毛症を放置してはいけません。
一般的には円形脱毛症は「10円ハゲ」ともよばれています。小さな円形の脱毛ができるというイメージをお持ちの方も多いでしょう。
実は、円形脱毛症にはいくつかの種類があり、円形の脱毛が1つだけできる“単発型”から、まゆ毛・まつ毛・陰毛など全身の毛が抜けてしまう“汎発型”までお一人おひとり症状が異なります。
はじめは小指の先や1円玉くらいの小さい円形脱毛症が、卵くらいの大きさになったり、数が増えたり、眉毛や全身の毛まで抜けてしまうかもしれません。
小さいからといって、円形脱毛症を放置しないようにしましょう。
円形脱毛症が治るまでの期間
円形脱毛症が治るまでの期間は数ヶ月~数年単位とさまざまです。
その理由は、円形脱毛症を引き起こす原因が一人ひとり異なるからです。たとえば、ストレスや生活習慣の乱れ、不適切なヘアケアなどが原因の場合は、その原因を除去すれば頭皮環境やヘアサイクルの乱れが改善し、円形脱毛症が改善する可能性があります。
一般的には少数の脱毛斑であれば、80%程度の患者が1年以内に髪の毛が生えてくるといわれています。
一方、重症化して広範囲に脱毛が進行したり、汎発型のように全身の毛が抜けてしまったり、アレルギーやアトピー性皮膚炎、自己免疫疾患などの病気を持っていたりする方は治るまでに長い期間が必要です。
191人の円形脱毛症の患者を約17年間にわたって追跡調査した海外の研究では、脱毛面積と脱毛面積の回復率について以下の報告がなされています。
脱毛面積 | 脱毛面積の回復率 |
25%未満 | 68% |
50%未満 | 32% |
50%以上 | 8% |
円形脱毛症が重症化し脱毛面積が広範囲に及べば及ぶほど、円形脱毛症は治りにくくなってしまいます。さらには、円形脱毛症を繰り返したり、生涯付き合っていかなければならないかもしれません。
円形脱毛症は重症化しないうちに、早く治すことが大切なのです。
円形脱毛症が治りかけの際に見られるサイン
円形脱毛症が治っていく際に気付きやすいサインは、次の3つがあります。
- 抜け毛が減る
- 産毛(うぶげ)が生えてくる
- 白髪が増える
円形脱毛症が治りかけてくると、ヘアサイクルは停滞期に入ります。少しずつ抜け毛が減り、脱毛部もツルツルした感じになったり、違和感やかゆみがなくなったりします。
さらに停滞期間の終わりになると、ごくごく短い産毛が生えてくるようになるでしょう。
脱毛部の産毛が増えてきたら、ヘアサイクルの停滞期を脱したサインです。
実は回復期に生えてくる髪の毛は、白髪であることがほとんど。
「せっかく髪が生えたのに白髪なんて…」
「白髪が生えるなら抜いてしまおう」
円形脱毛症が治ってせっかく生えてきた髪の毛が白髪だと、がっかりしてしまうかもしれません。
でも決してそのようなことは思わないでください。
せっかく生えてきた髪の毛を抜いてしまうのは絶対にNGです。
回復期に生える髪の毛に白髪が多い理由は、髪の毛を育てることに育毛・発毛のエネルギーが使われるからです。
実は、本来の髪の毛の色は真っ白。
毛母細胞の中にある色素形成細胞が、髪の色の元になるメラニン色素をつくっています。同時に毛母細胞は、髪の成長や発達も担っています。毛母細胞が発毛・育毛を優先し髪の色を後回しにした結果、白髪が生えてきてしまうのです。
さらにアレルギーや自己免疫疾患が原因の円形脱毛症の場合には、免疫細胞が色素形成細胞を攻撃してしまうケースがあります。その結果、メラニンを作る働きがダメージを受け、白髪が生えてしまいます。
なお髪の毛の色は、髪の毛が成長するにしたがって、色がつき本来の髪色に戻っていくことがほとんどです。
決して不安に思わず、生えてきた髪の毛を大切にしたいですね。
円形脱毛症に急になることはある?
円形脱毛症に急になることはあります。
円形脱毛症になる原因は多岐にわたりますが、ある日突然抜け毛が増えたと思ったら、数日~1週間単位で脱毛範囲が広がったり、数が増えたりします。
なかでも免疫の異常が原因で発症する円形脱毛症は、進行が早い特徴があります。急に抜け毛が増えてきたら注意が必要です。
なぜ円形脱毛症になるの?原因を徹底解説
なぜ円形脱毛症になるのか、はっきりとした原因はわかっていませんが、次のような要因があると言われています。
- ストレス
- 生活習慣の乱れ
- 女性特有!ホルモンバランスの乱れ
- 内臓や免疫の病気
一つずつ解説します。
①ストレス
円形脱毛症の原因として多くの方がイメージするのは、ストレスではないでしょうか?
ストレスが円形脱毛症の直接的な原因となるかははっきりしていません。
しかし、ストレスは頭皮環境を悪化しヘアサイクルを乱れさせるため、円形脱毛症のきっかけを作る可能性は十分に考えられます。
ストレスにより自律神経が乱れると、免疫も弱まります。その結果、アレルギーや皮膚炎、自己免疫疾患を引き起こすリスクが高くなり、病気が原因の円形脱毛症を招いてしまう可能性があるのです。
②生活習慣の乱れ
睡眠不足や生活リズムの乱れた生活は、頭皮環境を悪化させヘアサイクルが乱れる原因になります。
ヘアサイクルが乱れると、抜け毛や細くてコシやハリのない毛が増えたり、発毛・育毛に時間がかかったりとマイナスばかり。
さらに、脂質・糖分の多い食事、ファストフードやジャンクフード・加工食品中心の乱れた食生活は、髪の成長に欠かせない栄養が不足するリスクが高くなります。
とくに、良質なタンパク質やミネラルは、健康的な髪の毛を作るために欠かせない栄養素です。これらが不足すると、抜け毛が増え円形脱毛症になる可能性が高くなってしまうのです。
③女性特有!ホルモンバランスの乱れ
女性特有の円形脱毛症の原因に、ホルモンバランスの乱れがあります。
出産後にプロゲステロンやエストロゲンの分泌が急激に減ると、髪が抜けやすくなり円形脱毛症を発症する可能性があります。
そのほかにも、更年期の女性も女性ホルモンのバランスがゆらぐことで、抜け毛が増え円形脱毛症を引き起こすリスクが高くなるため注意が必要です。
④内臓や免疫の病気
円形脱毛症を合併しやすい病気に、アトピー性疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、軽度のアレルギー性鼻炎)があります。
そのほかには、橋本病に代表される甲状腺疾患、尋常性白斑、SLE、関節リウマチ、Ⅰ型糖尿病、重症筋無力症などの自己免疫性疾患の患者に円形脱毛症を合併しやすいといわれています。
そのほかにも、ダウン症の患者が円形脱毛症を発症しやすいという報告もありました。
さらに最近では、円形脱毛症は遺伝的要因が強い病気である可能性も指摘されています。
具体的には、以下のとおりです。
- 中国の調査では、円形脱毛症患者の8.4%に家族にも患者がいる
- 一親等以内での円形脱毛症の確率は、一般よりも10倍高い
- 一卵性双生児の場合には円形脱毛症の一致率は55%
参照:日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版 日本皮膚科学会
もしかすると、あなたの円形脱毛症も遺伝的要因が関連しているのかもしれません。
子供に初期の円形脱毛症が…その原因とは?
子供の円形脱毛症の原因の多くは、自分のリンパ球が成長期の毛包を攻撃し、髪が休止期の状態になってしまうために起こります。
なぜ、自分のリンパ球が毛包を攻撃してしまうかはわかっていませんが、自己免疫疾患の1つだと考えられています。
家族に円形脱毛症を発症した人がいたり、アトピーやアレルギー性疾患の既往があったりすると発症のリスクが高まります。
そのほかにもストレスが原因で円形脱毛症を発症する子供もいますが、原因がわからない子供も少なくありません。
円形脱毛症とAGA・FAGAは違う?脱毛の特徴や症状とは
円形脱毛症とAGA・FAGAは、髪の毛の抜け方や進行の仕方など、全く異なる脱毛症です。
それぞれの特徴や症状、治療方法をまとめました。
原因 | 脱毛の特徴 | |
円形脱毛症 | 免疫の異常やアトピー・アレルギー性疾患 | ・男性よりも女性のほうが発症リスクが高い ・全年齢に発症リスクがある ・円形に髪の毛が抜ける |
AGA(androgenetic alopecia:男性型脱毛症) | 遺伝や男性ホルモンの異常 | ・20代以降に発症しやすい ・10歳代の若年でも発症する可能性がある ・頭頂部や前頭部、額の生え際の髪が薄くなる ・徐々に進行する |
FAGA(Female Androgenetic Alopecia:女性男性型脱毛症) | 女性ホルモン(エストロゲン)の減少 | ・40代以降の更年期におこりやすい ・全体的に髪が薄くなる、ボリュームが減る、ハリ・艶・コシがなくなる |
初期の円形脱毛症を早く治す方法は?絶対にとるべき5つの対策
円形脱毛症を早く治すためには、絶対にとるべき5つの対策があります。円形脱毛症を重症化させないように、5つの対策を知っておきましょう。
- 初期の円形脱毛症を放置しない
- 専門クリニックを受診する
- 生活習慣を整える
- ストレスを軽減する
- 円形脱毛症の原因となる病気を治療する
それぞれについて、詳しく解説します。
対策①初期の円形脱毛症を放置しない
円形脱毛症は進行する病気です。
初めは一円玉くらいの大きさだったのに、大きくなったり、数が増えたりする可能性があります。進行すると全身に広がったり、重症化して完治までに時間がかかったりしてしまうことも。
初期の円形脱毛症は放置せず、すみやかに適切な治療を受けることが大切なのです。
対策②専門クリニックを受診する
円形脱毛症の原因は多岐にわたります。病状に応じた適切な治療が、円形脱毛症の完治には不可欠です。
円形脱毛症は皮膚科や薄毛・抜け毛の専門クリニックで治療できます。
どこの専門クリニックに相談したらいいかわからない方は、ぜひ一度当クリニックへの相談をご検討ください。
対策③生活習慣を整える
規則正しい生活やバランスの取れた食事を心がけ、十分な睡眠をとるようにしましょう。
また毎日正しい方法でシャンプーをして、清潔な頭皮環境を保つことも大切です。
対策④ストレスを軽減する
健康的な髪が生える頭皮環境を目指すなら、ストレスをこまめに発散し、貯めないようにしましょう。
運動は頭皮の血行を促進し発毛促進に効果が期待できます。
さらに規則正しい生活リズムや栄養バランスの取れた食生活は、自律神経を整え、ストレス耐性を高めます。対策③と合わせて実践すると、より効果的ですね。
対策⑤円形脱毛症の原因となる病気を治療する
アレルギーやアトピー性皮膚炎・自己免疫疾患などの病気が原因で円形脱毛症を発症している方は、まずは病気の治療をスタートしてください。
少し遠回りに感じるかもしれませんが、原因を断つことで円形脱毛症の完治が見込めます。
医師の指示を守り、適切な治療を受けましょう。
円形脱毛症に気づいたら医師へご相談を
円形脱毛症は誰でも発症する可能性がある病気で、その原因も多岐にわたります。
さらに円形脱毛症は進行も早く、重症化・慢性化しやすい特徴があります。
初期の段階で適切な治療を受けることで、髪が生える環境を取り戻すことができるかもしれません。
円形脱毛症には早期の治療が大切です。まずは、クリニックまでご相談ください。